第311話 攻城戦

 一応抵抗を試みて撤退したと見せる。


 城門近くにわざと露呈させた落とし穴を作る。砲撃で露呈した感じで穴を開けていくのだ。

 焦って早く着火した火の壁など演出には事欠かない。


 投石機の石は母船に届かず、上陸後の小舟を若干破壊する程度だ。


 城壁から小石を投げて足止めし、多少の怪我人を出すに留める。


 鉄砲を撃ってきたので、予め欠損修復で作った数人の兵の動かない己の体に着弾させ、断末魔の叫びをしてから城壁から外に投げていく。


 兵が落ちる度に歓声が起こる。

 俺は呆れていた。戦い方だが、下手なのだ。まるで素人の為演出に苦労する。


「聖堂にて決戦だ!一旦引いて立て直しを図れ」


 城門に火炎瓶を投げて時間を稼ぐ。ベタなセリフだが本気と感じたようだ。


 敵兵は消火に必死だ。城門から雪崩込みたいのだが火が邪魔だからだ。


 驚いた事に攻城に必要とする梯子や破壊槌がなく、艦砲攻撃オンリーだった。

 城門は実は破壊に至っていない。あまりの破壊力の無さに中から破壊したのだ。

 破片の飛び散り方から分かる筈だが、砲撃で破壊したと思い込んでいた。


 城門を突破すると、逃げる兵士を追いかけて行く。勿論ペースを落として誘導している。大聖堂の入り口に最後の兵が到着すると門を閉め、致命傷にならない位置に矢を当てて一旦先頭を下がらせる。勿論聖堂には誰もいない。正確には一般兵の事だ。


 やがて何処かの建物を破壊して柱を何本か持ってきて、破壊槌をこしらえていた。そうして扉を破壊して行く。門を入ると中庭があり、ホールに向かって逃げていく。わざと扉を開け放ち、敵兵を誘導している。


 やがて敵兵がなだれ込んで行く。愚かな事に全軍大聖堂に来ていた。怪我人が城壁の外に連れられているだけだ。因みに大聖堂の入り口の先は敵国の首都の行政機関だ。間髪入れずゲートを閉じていく。兵を送り出して城壁近くの怪我人と僅かな護衛と医療班を捕らえた。


 あっけなかった。囲まれるとあっさり降伏したのだ。


 俺は船に向かう。

 一隻一隻へと仲間を送り込み制圧し、収納に入れるの繰り返しだ。面倒くさかったので敵兵は敵国に適当に送り返した。


 旗艦には提督がいたが、驚いた事に部下を戦わせているのに、部屋で女とやっている最中だった。


 裸のまま捕らえるが、妻達の目を汚したくないから下着だけ着させた。女は愛人らしい。


 旗艦から降伏した旨の信号を上げさせ、船を拿捕していく。面倒くさかったので密集させ、大型船に移乗させた。その後ゲートで適当な街に送り返していく。怪我人は治療し、一部の幹部以外はやはり適当に送り返す。


 何も言わずただゲートを指し示し入るように促すだけだ。


 一部の船が逃げたが、俺はわざと数隻を見逃した。勿論一部は捕らえ消していく。消すイコール収納に入れるのだが、向こうからしたら恐怖そのものだろう。


 そうして夜中になったが、敵の壊滅を完了したのであった。

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