第310話 おもてなし
船団に対して俺達が取る対応は、接近に対して何も手を出さないという事だ。
奴らは一見順調そうに来れたのだが、辿り着いた時に一気に捕らえる。まさかそんな事になるとは思わず、ちょろいと思いながら来てるんだろうなと考えていた。が、現実はそんなに甘くない。
船団に対しては途中で下手に手を出すとあっという間に全滅させてしまいそうでやめたのだ。
途中で嫌がらせをする案も出た。提案者はホーネットだ。上空から糞尿を撒くという案だった。俺は即座に却下した。誰が撒くんだと。そうして妻達から袋叩きに遭っていた。気持ちは分かるが持っていくのは辛いんだよ。
奇襲とまでは言わなかったが、夜中に上空からフラッシュを放ち寝不足にさせるという手もあった。だがそれもやめた。行うのは、奴らがどこに向かっているかをこちらが把握している事を伝えてしまうからだ。
だが、進行先を把握はしたいので、命令を複雑にさせてしまうがサラマンダー先生にお願いした。
おそらくちゃんとした方位を把握する技術を持っているのであろう。
俺はそう思っていた。確か緯度と経度などを、星を頼りに割り出して進むそういう道具があったはずだと。この世界にもあるのかどうかわからないが、残念ながら俺には船を航行術を頼りに航海する術を知らない。
昔の人達は今のようにレーダーだとか GPS 等もないから星の位置や日付から進む方向などを割り出したのではなかろうかと思っている。
もしくは方位磁石か?
はっきりと方位が分かっていて進んでくるのだろうとは思うものの、途中途中入ってくるワーグナーへの進行情報はほぼ寸分違わずまっすぐ岸辺を目指していた。
こちらの準備が整った二日後にその時は来た。目視で先頭が確認できたのだ。一般人の服装をさせた兵士をダミーの街に放ち、一般市民が慌てた素振りで城の方に逃げたようにさせた。城に戻ってからは完全武装に切り替え、城に入ってきたところを捕らえる。
見張り台はけたたましく鐘を鳴らし、狼煙を上げ、敵襲を告げる。合図はもちろん本来のものではない。偽のパターンを用意していたのだ。向こうからは見た事のないパターンの狼煙と、鐘の鳴らし方に疑問を感じるかどうかわからないが、船団は自分達が発見されたという事が分かったであろう。こちらは門を固く閉じ籠城の構えをする。向こうにはそういうふうに映るであろうと計画していた。
海岸にはデカデカと看板を立てた。これより先無断での侵入は敵対行動とみなす!皇帝ランスロットというような看板を複数作っていた。どんなぼんくらでも見えるであろうという感じでだ。
やがて船が停止し艦砲射撃が始まった 。城壁はびくともしないが、門がダメージを受けて行く。当初は百発放って一発当たるかというような感じだが、艦砲射撃が始まると共に小舟が出され、そこに多くの人が乗って上陸を始める。
城壁は見た目は砲撃によりボロボロではあるが、厚みがあるので艦砲射撃ぐらいではどうということはない。向こうもそれが分かっているのか狙ってくるのは門ばかりだ。
前方に着弾したりするが時間と共に命中精度が上がってきた。着弾位置に対しての補正をかけて修正してきてるのであろう。
時折壁を飛び越えて街中で着弾するものもあった。やがて最初の小舟が岸辺にたどり着く頃に、城門が燃え、やがて崩れ去った。
城門と他の建物の間には距離がある為、街の炎上には至らないが、向こうが砲撃を仕掛けてくるのは基本的に城門に対してのみだった。街中に行くのはあくまでも流れ弾である。街を無傷で占領しようとしている素振りを感じていた。
こちらに向かってきた船というのは一千隻を超えていたようである。千隻を超えた辺りから数えるのやめて、大まかにこんなものだろうという数え方にしていた。なんか面倒くさかったからだった。
上陸しだした敵兵は隊列を組み陣地を築き上げて行った。そして斥候が城門の方に向かって行く。わざとらしく矢を射掛けるが、敢て外す。中途半端な情報を与える為だ。
やがて全ての小舟が岸辺に辿り着いたが、兵士の数が4万から5万といったところであった。
盾を持った者とと火縄銃を持った者がいる。また各々の腰には剣が下げられていた。火縄銃を持っているとはいえ、接近戦にも対応しなければならないからであろうと思う。
俺達が立てた無断侵入をするなという看板は、奴らが笑いながら燃やしていた。面白いように想定通りの行動をしてくれるものだから笑いが止まらなかった。
そして敵兵は意気揚々として、一糸乱れぬ動きで城を目指して進むのであった。
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