第301話 何故
俺は気持ち悪さに口を押さえながら目覚めた。がばっと起きると誰かが桶を差し出し、背中をさすってくれた。そして耐えられずに吐いた。
いつもの事だが、死者蘇生をした後の症状でいつもよりも一際辛かった。急ぎ状況を、確認しないといけない。そう、いつもながらに前後の記憶がないのだ。妻達が全員いた。まだ少女の為結婚していないトリシア達等時が来たら娶る面々まで含め全員いた。こんな事は初めてだ。
「誰かを死者蘇生したようだね。誰だった?」
皆が俺に指を指す。
どうやったかは分からないが、俺が死んで意識がまだあったかして、死者蘇生を自らに掛けたようだ。
「俺が死んで、自分に死者蘇生を使ったって事か?因みに俺に何が起きたか誰か知っているのかい?」
アンバーが手を挙げて話し出した
「客人が来てまして、護衛当番の私を部屋の外に出されて暫く話し合われていました。急に音がして慌てて部屋に入ると私を見て相手が窓を蹴破って逃げていて、ランスロット様は口から泡を吹いて苦しんでました。そして息を引き取ってしまわれました。皆に伝えたらセレーシャ様が心臓マッサージや人工呼吸なるものを行い、暫くして息を吹き替えされました。また下にいたトリシア達が後を追いました」
「セレーシャが助けてくれたのか。ありがとう。俺と面談してた奴はどうなった?」
「はい。先程トリシアさん達が戻りましたが、その、気配を追いましたが
既に別の者に殺され、殺した者を追いましたか、逃げられ、死体の所に戻るも死体は無くなっていました」
「つまり手掛りは無しか。あと紹介状は?」
「そ、その、偽物でした」
アンバーが話していたが、最近は緊張感が薄くなり、確認が疎かだったようだ。
後から発行者に確認したら身に覚えもないし、筆跡が違った。ただ、蜜蝋の封印だけは本物だった。
印を確認してもらったら確かにいつもと向きが違っていたと。滅多にないが、数カ月に一度位は慌てていて反対に収納する事も無くはないので疑問に感じなかったらしい。
巧妙なのは、何も盗まない事だ。本物の封をし、印を元に戻しているから誰かが勝手に使った事が発覚しなかった。
多少の疑問は有っただろうが、何も盗まれていないから気のせいか?位にしか思わない。相手の方が上手なのだ。
そして段々思い出す。
確か別の大陸から取り寄せた香水を献上され、香りを確認したら苦しくなってきた。
毒を自らの体にに掛けてしまったのだ。俺も甘かった。間抜けとしか言いようがない。俺に止めを刺そうとしたが、アンバーが入って来て慌てて窓を蹴破り逃げていき、トリシア達が追っていった筈だった。また、セレーシャが駆け付けて心臓マッサージしていて、そのお陰で数秒だけ意識を取り戻し自らに死者蘇生をしたんだったと。
段々思い出してきた。
「皆済まない。今回の事は誰も責められない。責めを負うとしたら俺だけだ。机の下に香水がある。調べれば何か分かるかもだが、匂いはかがないように。あれを吸ってこうなったから」
警備の強化と、数少ない手掛かりから相手を追う。また死体がないのが痛かった。状況からは最低3人が絡んでいると判断していて、嫌な予感がしてならなかったのであった。
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