第208話 前途多難

 翌朝始めての二人での、普通じゃないがまずまず普通の朝をむかえた。


 ダンジョンを出たら何とか和服を作って欲しいと懇願された。和服が好きで、好んで着るという。


 スマホの存在に驚いていた。久し振りに電源を入れ、画像を見ると子供の写真が出て来て混乱した。裕美の話だと、記憶を無くす前に日本にいた筈だから、向こうの子供じゃないかと言う。手帳を見ると確かに子供がいると、記憶を無くしつつあると書いている。こちらに来てからの事はちゃんと覚えている。不思議な感覚だった。


 淑女の衣というのがあり、着せると中々似合っていた。


「どうじゃ似合うか?」


「似合うけど、おっさん節になってるぞ」


「あら、失礼。三年もあんなだったからなのよ。元に戻るには時間がかかる掛かりそうね。でも嫌じゃないでちゅよね?」


 俺は震えだした。そして胸にダイブするも棒切れで頭をはたかれ、我に返る。


「スキルの反動だとは分かっているけど、かなり酷い状態ね。出来れば二度と使わないでね」


 頷くしかなく、装備を整え裕美の装備の状態を確認していく。準備が整ったのでシェルターを出てダンジョン攻略に挑むのであった。


 そしてシェルターを収納する時は通路から見えない所に裕美を待機させパワーレベリングを図る。

 レベルリセットしたが俺の補正があればあっという間にSSSが出来上がるだろうと半ば確信している。


 シェルターを収納すると同時にファイヤーボールを通路へしこたま撃ち込むと、どんどん魔物が倒されていくのが分かる。


 何故なら裕美がやかましいからだ。

 レベルがいくつ上がっただのステータスの上がり幅がうんたらとはしゃいでいる。

 そして1フロアを終える頃には


「ごめん。もう駄目!少し休まないとこれ以上歩けない」


 と早くもグロッキーだった。


「どうした?もう駄目なのか?体の調子が悪いのか?」


「何故か分からないけど私の体力がおかしいのよね。体がまだ馴染んでないのかも?ちょっとだけ休憩させて!そうすれば大丈夫だから。ごめんなさいね」


 彼女を休憩させている間俺は周辺警戒だ。


 一時的にシェルターを出し彼女の脚を揉んだり腕を擦ったりとそんな感じだ。それでも何とか夕暮れにはボス部屋に着いて、俺が1分位で撃破する。

 そして今日の夜休憩に入るが既に裕美は床に座ってゼイゼイと息をする状態だ。


「悪い。本調子じゃないのに無理をさせたな。いまシェルターを出すからね」


 一言うんと言うのが精一杯で、お姫様抱っこで中に入り、装備を脱がせベッドで休ませる。急いで風呂の準備をし、裕美を入浴させる。体を洗うのも億劫だったので俺が洗ってあげて一緒に湯船に浸かる。そうしないと沈むからだ。


 30分位浸かっていると大分体も落ち着いたようで何とか歩く事ができた。

 軽めの食事をし、早々に寝る事にしようと決め寝る前に裕美にマッサージをしているといつの間にやら寝息を立てている。あまり弱気を吐かないがやはりかなり無理をしたようだ。これ以上は無理をさせたくない。明日からどうするか頭が痛いのだ。彼女の体を確認するも体が少し熱かった。まだ馴染んでいないようだというのが何となく分かる。

 そして俺はずっと彼女の頭を撫でている。

 時折呻くのでその都度背中を撫でる。

 俺もいつの間にか寝ていったようだった。

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