第207話 弱者

 目覚めるとまずは刻印の有無を確かめた。

 ステータスと念話でだ。

 抱きしめて刻印がちゃんとあると報告するも、刻印の事は以前の俺と似たり寄ったりの知識しかなく、寿命の事を話すと口をポカーンと開いてトリップしていた。


「ソロソロ戻っておいで!ふう」


 耳に息を吹きかけると


「ひぃーやー」


 と呻き戻ってきた。


「なあ、そう言えば人間に戻った裕美って戦闘能力はどんななんだ?」


 因みに名前は先程漢字を聞いて判明っす


「それを私に聞く?」


「うん!教えてね!」


「十分に足を引っ張る自信があってよー!私を守るのよ!!!」


「えっ?ひょっとして弱いのか?」


 ドヤ顔で頷いた


「はう!裕美の戦闘力を頼りに訪ねていったのに」


「てへ♡」


「まじでか!?」


「ええそうよ!それがどうしたの?ふふふ」


「まあダンジョンを出た先の事ははいい。今どうするのかだよ!レベルとかステータスってどうなってるんだ?何故かヒロミの時から見れないんだよ」


「ふふふレベルは100でカンストね!ステータスは2項目共に150よ!魔力は文字化けでよく分からないわね。キングの時は魔力0で強さは10万はあった筈だけどいちいち覚えてないわね」


 俺は頭を抱えて唸っている。


「ギフトはどんなだ?」


「重量操作とゲートオブヘブンじゃなくてエンジェルね何故か魔王として召喚されたのに天界へのゲートを開けられるみたい。ここじゃ無理だけどね。正確には天使がいる所にゲートを開けれるの」


 色々繋がった。俺がオリヴィアを天界にて権利回復するのは彼女のお陰っぽい。その後俺の隷属化とレベルリセットを話し、更に転移を含めスキルを可能なだけ与え、生き残りを図る算段をしていった。


 失禁や気絶程度で何とか済み、裕美を守ると誓った。

 勢いで刻印を刻んでしまったが、裕美は後悔していないと、むしろずっと望んでいた事と言っていた。この後何度死んでも絶対に生き返らすと話をし、地上に向かう戦略を話していくが、裕美は何故か俺をうっとりと見つめているだけだ。キングの体で無くなるや否や単なる女に戻り、戦士の心はもう持っていない。


 元々心優しい闊達な女性だ。希望の髪型を聞くと肩まで位の髪型が好きと言い、ショートカットから欠損修復で伸ばしてあげた。

 剣術のスキルだけはかなりの物で俺よりスキルは上だ。但し、実技が無いので修行を積んだ者の前だと苦戦必死となりそうだった。


 今日はまだまだ辛いというので、部屋でいちゃいちゃしてまったり過ごす事にし、明日からのダンジョンに備える。ダンジョンで出たドロップで装備一式は揃うが、当面は軽量のドラゴニックメイルを装着する。本来の体での戦闘に慣れてから別のにチェンジの予定だ。


 彼女は美しい。歳はよくわからない。20位にしか見えず、キングになっている期間を除けば今は20になったばかりという。まあ大人の女性の体で年齢が固定されたのだ。彼女はそれは喜んだ。

 顔つきはキリッとした麗人で、宝塚チックな綺麗さだ。

 元々男勝りな性格でサバサバしている。それとテニスをやっていたといい、高校の時はインターハイ予選で決勝まで入ったと言っていた。短大に入ってからは何をしていたか覚えていないと記憶の曖昧さが分かったりした。


 彼女が好きだ。キングの外観が浮かばなくないが、まあ忘れよう。今は愛する女性がここにいる。それで十分だ。そうやって時間が過ぎていき、やがて夜を迎え、眠りにつくのであった。

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