第176話 昇天させられる
俺は急ぎ部屋に入る。やはりコアがある。恐らく今回の召喚絡みのダンジョンは最後だろう。一番最後の出没と見ている。成長中だったのかこれが最大だったのか最早分からない。逸る気持ちを押さえ、宝箱の中を収納に入れる。2つ目のシェルターだった。セレナに持たそう。
ひと呼吸して、特に回収忘れが無い事、俺の装備に欠落が無いのを確認し、臨戦態勢でコアを収納に入れると何時もの如くダンジョンの外に出たが、俺は急激に気持ち悪くなり、嘔吐して意識を失ってしまった。
気がつくとベッドの上だ。それも懐かしい屋敷だ。状況が分からないがボレロに設置したワーグナーで買った屋敷に居るのだろうと理解した。そしてここにはセレナがいる。俺の心臓ははちきれんばかりに鼓動が早い。ふと見える外の景色はあの時の幻覚の通りだ。
俺はふと思う。ひょっとして今がその時か?いや駄目だ。まだ早い。確かセレナの誕生日って来月だよな。
そんな事を思っていると俺の手を誰かが握ってくれていた。
そう言えばあの時もシェリーが手を差し伸べて握ってくれていたっけ。
左手はシェリーだけどもう一方の手はセレナだな。
「おはよう。状況を教えてくれないかい。あと喉が枯れそうだ!」
「ああ良かった気がついたのね。今水を用意するね!」
シェリーに続いてセレナが
「良かった!志郎ったら急にいなくなっちゃうんだもん!心配したのよ!刻印持ちの子には志郎が生きていると魂が感じるって言われたの。羨ましかったの。私も欲しいなあって!それと皆全員無事よ!」
「なあシェリー悪いけど着替えの用意と風呂の準備をお願い。それと皆に俺が起きたと伝えてくれないかな」
シェリーが頷いて部屋を出ようとするので腕を掴み強引に抱き寄せ、キスをして送り出した。シェリーは驚きつつも嬉しそうに笑顔で部屋を出る。
俺はセレナに伝えるべき事を伝える事にした。
「なあセレナ、刻印の義は約7ヶ月後に行う予定にしたい。理由は分かるね?うん。そう、そうだよ、ルシテルから聞いているだろうけどセレナの寿命がそれだけだ。俺には見えるんだ。本当は20歳の誕生日にと思っていたのだけど、少しでも大人の女性の体になるのを待ってあげたかったが、大学生にギリギリなった時になるね。ギリギリまで待てばそれこそ俺が死ぬまでは生きられるから文字通り一緒に死ぬ事になる」
セレナが泣き出したのでそっと抱きしめ熱いキスを交わす。
セレナはなんとなく寿命が短いと、魂食いにかなり喰われていると理解していてルシテルに色々教えて貰っていたという。
セレナは泣き止んでから先のダンジョンの話をしてくれた。
先頭を行く俺の存在が急に消えて皆驚いたと。そして俺が消えた先が壁になっていて先に進めなく、止むをえず引き返した。
交代でダンジョンの出口を見張り、セレナ自体はテレポートのギフトの関係で皆をあちこちに運ぶので忙しかったと言う。
そして俺がダンジョンから出て直ぐに嘔吐して気絶したので慌てて屋敷に連れ帰ったというのだ。
今はもう何ともないので50階層での精神攻撃のダメージと思うと説明した。
お腹が減っているので食堂に行くとボレロ組とダンジョンアタック組の皆が出迎えてくれて何もなかったかのように食事となった。
食後に俺がこれよりバルバロッサ討伐に向かうと言うと血相を変えたレニスに平手打ちを喰らい、
「貴方分かっているの?このまま無理をすると体を壊して死ぬわよ!無理し過ぎよ。せめて3日は休みなさい。後で部屋に行ってマッサージするから心身共にリフレッシュしなさい!バルバロッサが攻めて来ない限り休むのよ?必要なら、いや必要じゃなくても私の・・・」
俺はその迫力に気負されて頷く。最後の方は周りの声に掻き消されて聞こえなかったんだよな。レニスは俺の言いつけ通りセクシー過ぎる格好は辞めて、大人しい服装でちゃんとした格好をしていたが、やっぱり清楚な服の似合う絶世の美女だなあと思ってしまう。食後お風呂に入り、大人しく部屋に行くとレニスが待ち構えていたのだった。
またもや昇天させられる俺である。背中の筋肉が固くなりすぎていると言っていた。自分では認識していなかったが、マッサージして貰うと良く分かったんだよね。知らず知らずの間に無理をしてたんだなと。望むと望まないに関わらず魔物が這い出てきてスタンピードが発生してるんだからしょうがないと思うんだが、レニスは容赦なくマッサージをしてくれて、その心地良さに不覚にも寝落ちしてしまった。やはり疲れていたんだろうね。
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