第139話 先へ

 この階層は真っ暗だった。

 志郎は夜目が効くので夕方位にしか感じないのだが、皆はそうはいかない。


 時折ファイヤーボールを打ち出して照明代わりにしている。ライトを試したが、余り遠くを照らす事が出来ず、魔物を呼び寄せるだけだった。


 何も無い空間だ。ただ闇雲に広いのだ。


 階段のある場所はは分かる。そこだけうっすら光っているからだ。



 俺はそこらかしこに特大のファイヤーボールを撃ちまくっていた。

 スキル取得アナウンスが騒がしいので、かなり倒してるようだ。


 余りに歩みが遅いので、恥ずかしい手段を取る。子供の頃遊んだ遊びだ。ロープで輪っかを作り、皆が中に入りロープを掴んで動く電車ゴッコだ。


 それを真面目に行うのだ。

 ユリアは知っているから恥ずかしがっていた。


 俺は緊張感がなく、馬鹿な掛け声をする



「シュッポシュッポシュッポッポ」


 と緊張感の無い掛け声をしていると、ユリアに


「は、恥ずかしいから止めませんか?」


 と言われたが、あっかんべーをする。

 ユリアはわなわな震えていた。そして


「ランスのアンパンマン」


 そう言われるが、俺は挫けず進む。


 俺は現在運転手だ。子供の頃を思い出す。いやそうじゃない、子供の遊戯を真面目に命がけで行っているが、側から見たら異様だよな。

 厳ついアリゾナや美しき双子、おっさんのオリンズにシカゴが、子供の遊戯をしてるんだもん。



 ちょっとふざけていたが、何かが飛んできて剣で切り払った。一気に現実に引き戻された。正体は鳥型の魔物だった。そして次々と飛んでくる。

 暗いが的確に襲ってくるのだ。暗くてもこちらの居場所がわかるようで皆次々に傷を負う。


 ファイヤーボールをあちこちに出すも追いつかない。ロープを捨て、頭上に大きなライトを出現させて、皆各自の武器で自衛をする。



 段々飛んでくる場所が分かってきたので、サラマンダーを30程強目に出して、そちらに飛ばした。間もなく鳥は飛んでこなくなった。そこから戦隊を組み、俺を中心に皆で固まり進んでいく。時折鳥が突っ込んでくるが、怪我をしても俺が速攻でヒールを使って対処していった。

 1時間位進むとようやく階段に着いた。


 後から後からきりがないのでとっとと階段を降りていく事にした。

 95階はボス部屋のみだ。


 入り口で少し休憩しボス部屋に挑む。

 コカトリスだ。


 奴が動き出す前に必殺技を行う。アイスウォールを展開して魔力を流しつつ上に飛びホットを唱え熱湯を注いでいく。

 ダークも唱え、方向感覚を狂わせて脱出できなくする。

 ヤバそうなガスが出てきたのでアイスウォールで蓋をして三分くらい待つと発光現象と共にボスが息絶えたのが解る。

 スキルは時間停止だった。

 数秒時間を止められる。ドロップはアリゾナ用の鎧だ。


 以前と違い、魔力はまだまだ余裕だった。


 先をどうするか考えたが、皆消耗しきっていた。

 俺は休憩を選んだ。まだ昼少し先だが、今日はここまでとした。


 テントの中で皆が英気を養う為に男衆に酒を出してやった。

 俺は疲れから夕飯を食べてから早々に寝てしまった。


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