第02話 招待

「ありがとうございます、呼んでくださって」



 ユーミアはソラにそう語りかけた。

 目の前では、ミィナが色々な料理を差し出されて困惑している。子供たちは誰が一番最初にミィナに選んでもらえるかを競い合っている様だ。

 視界の端では、ハシクが無心で料理を口へと運んでいる。



「気にしないでください。寧ろ、こっちがお礼を言いたいぐらいですよ。前にミィナが来てから、『ミィナ様はいつ来るんですか?』なんて皆に聞かれて困っていましたから。領主としての仕事の方が心配なぐらいですよ」


「そちらなら大丈夫です。事情を話したら、皆喜んで仕事を手伝ってくれましたから」


「こんな所の招待に応じているところを見ると、ミィナの仕事に対する姿勢、少しは変わったみたいですね」



 以前ミィナがこの場所を訪ねてきた時に、ソラはミィナが異様なほどに仕事に打ち込んでいる事を知った。今回はそこから抜け出すきっかけにでもなればと招待し、ミィナがそれを受けて成り立ったのだ。

 ソラの言葉に、ユーミアは苦笑いを浮かべながら答えた。



「いえ、ほとんど変わっていませんよ。一体、誰に似たのでしょうね。ミィナ様のご両親は、ここまで頑固な性格はしていなかったはずなのですが……」


「ミィナは、ってことは他が変わったんですか?」


「変わったのは私達です。ミィナ様は、休んで欲しいと言っても休んでくれません。しかし、以前こちらへと来た時に気が付いたのです。仕事の一環と言えば、大抵の事はしてくれる、と」


「なるほど。ミィナの扱い方を学んだわけですね」


「ちなみに、今回は領内の子供たちの様子を見ることや、ソラさん達に困ったことが無いか確認する、といった理由を付けています。どちらも直接赴かなくても把握できているのですが、それはミィナ様には内緒にしてあります」



 ユーミアは悪戯な笑みを浮かべてそう言った。



「領主の元に集まる情報を隠して、その調査をミィナ自身にやらせているんですね。もし仮に、ミィナがそれに気が付いたらどうするんですか?」


「その時はその時です。仕事に見せかける事さえできればいいと分かったので、何かしらの策は出せると思います。ミィナ様の体が最優先である私たちにとっては、そちらの方が仕事よりも大切です」



 そんな会話をしている二人に、皿を持ったミラが話しかける。



「今の平穏も主であるミィナあってこそじゃからな。例え民のために頑張っても、ミィナが倒れれば全て水の泡じゃ」


「俺たちに手伝えることがあれば言って下さい。平穏を享受してもらっている側として、出来る限りの事はします」


「そう言って貰えると心強いです」



 そこまで話した時、ティアが家から出て来た。その手には、第二波の料理がある。気が付けば、机の上にずらりと並べられていた皿は既に半分ほどが空になっていた。



「二人とも、まだ食べておらぬのじゃろう? さっさと行かぬとハシクと子供たちに先を越されるぞ。ティアの手伝いは妾がしておくから気にするな」



 ミラはそう言うと、空にした手元の皿を持ってティアの元へと向かった。

 ソラとユーミアはミラの言葉に甘え、料理が並べられた机へと向かっていった。

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