繰り返される夢 2
「8時15分か……。」
駅のホームの椅子に座りながらスマホで時間を確認した。
耳にイヤホンを突っ込みプレイリストから適当に再生する。
目の前で電車が出発したことで遅刻が確定したため、焦りや不安はいつの間にか消えていた。
唯一の僕の中に残る焦りといえば、あれだ……。
一時間目が学年主任の授業ということだ。
遅刻と授業中の居眠りには特に厳しいこの人の授業に遅刻していくということは実質休みと同じだ。
たとえその遅刻が1分だとしても……。
そんなことを思い、どう言う言い訳をしようか考えながら今日のニュースを見ているとふと思い出す。
何かを忘れている。
やらなければいけないことを。
しかし思い出せない。
頭の中はそれだけで満たされる。直接頭に流し込んでる音楽でさえ入ってこない。見ているはずのニュースもスクロールしているだけ。
なのに思い出せない。
しかし、それを上回るほどの音と風圧でハッとする。
僕を現実に戻してくれたことに少し嫌悪感を抱きながらも電車に乗り込んだ……。
学校に着くと、一時間目があと数十分で終わるというところだった。
こんなに遅刻するとあとでどうなるかわからない……。
「サボるか……。」
僕は即急にサボりを決めてトイレに向かおうとする。
ガラスの窓から中をのぞいてみると、僕の存在に気づいた数名がこちらを見て笑いながら手招きをする。
そんな奴らに愛想笑いをしながらトイレに向かおうとすると、席が一つ多いことに気がついた。しかも僕の隣に……。
気がついたら僕は扉に激突していた。
どっしゃ〜んと大きな音がなる。
その音に反応して教室内から大きな足音を立てて誰かが出てくる。
あいつだ。学年主任だ。
案の定奴は怒る。
「2人ともちょっとこっちへ来い。」
僕は静かで穏やかな声に込められた怒りに恐怖を覚えた。
しかし何かが変。
「2人?」
恐怖よりも疑問が声に出てしまった。
「早くこっちへ来い。」
僕の言葉は空気となり、僕は疑問を持ったまま先生についていった。
放課後になり、僕は教室で反省文を書いている。それも1人の女の子と机を向かい合わせて……。
後から友達に聞いた話だと、女の子はトイレで授業をサボってたらしい。
しかも、今日転校してきたばかりなのに30分以上もトイレから帰ってこなかったのでサボりと判断され、現在一緒に反省文を書いている。
「いや〜、災難だったなぁ〜。」
彼女が急に口を開いたのに少しびっくりしたが、ここで無視するのも感じ悪いので話すことにした。
「今日転校してきたんだっけ?」
反省文を書きながら反応すると、少し驚いたような顔をされたが、彼女も反応してくれた。
「そうそう!京都からね。それにしてもあんな厳しい先生がいるなんてびっくりだよ。」
「あの先生はこの学校の隠れ名物でもあるからね」
「隠れ名物って櫟谷七野神社じゃあるまいし。」
「なにそれ、京都ネタ?」
「あれれ、通用しなかったかぁ。うちの前の家の近くにあった神社なんだ。そう言えば君の名前聞いてなかったね。」
話の展開が早いなぁと思いながらも、僕も彼女の名前を知らなかったのでここで自己紹介をしておくことにした。
反省文を書くのをやめて、彼女の後ろの壁を見ながら口を開く。
「初めまして。僕は、佐藤進。生まれも育ちも東京です。」
「ふぅ、ふふふ……あははは‼︎」
突然の笑い声にびっくりしてとっさに彼女の方に目を向けると、お腹を抑えながら爆笑している。
我ながらつまらない自己紹介だと思ったが、急に初対面ぽくなるのが彼女にはツボだったらしい。
「ふー。ふふ。ごめんなさい。初めまして?私の名前は鈴木春香。生まれは京都で育ちは京都と東京です……。」
違和感があったが、それよりも真似されたことに意識が向き、どうでもよくなっていた。
「とりあえず反省文書いちゃおっか。」
やっぱり話の展開が早い。つっこむタイミングをもらえなかったのは心残りだが彼女はもう書き始めていたので僕も書き始めた……。
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