初めての彼女がハイスペック過ぎてついていけない
TAZ(ぱんぴ学園)
第1話(邂逅)
ある日の学校帰りの事であった。
踏切を渡ろうとすると一人の女生徒が線路上にうずくまっているのが目に入った。
きっと足を滑らせたのだろうと、そのまま通り過ぎようとしたが、何やら慌てている様子が見てとれる。妙だなと思って目を凝らすと彼女の足は線路に挟まっていた。
まさか、そんな珍妙なことが起こり得るとは
「ええ!?」
考えるより先に体が動いた。むしろ考えたら体は動かなかったに違いない。後になって、何と軽率な行動だったのだろうと思い返し身震いしたが、兎も角、この時は勝手に体が動いてしまっていたのだから仕方ない。
人生、一寸先は闇とはよく言ったものだ。
僕は自分の荷物を放り出し、女生徒の元に駆け寄ると腰をかがめて彼女の足を引っ張ってみた。
「痛いっ」
声に驚いて慌てて手を離した。どうやら無理な方向に引っ張ってしまったらしい。
「靴は脱げないのですか?」
それが最も手っ取り早い危機回避法だと思われた。
しかし彼女の返事は芳しくない。
「きつく挟まって無理みたいなのです」
周囲を見回すと、踏切を渡った先に一人の中年女性が見えた。手助けしてはもらえないものかと試しに叫んでみたが、彼女はこちらを凝視したままで微動だにしない。
電車はまだ見えないが踏切音が焦燥感を駆り立てる。
女生徒は今にも泣き出しそうな気配である。
こう言っては不謹慎だが、とても艶のある色っぽい表情だった。
その様子を見て僕は腹を括った。線路の上にどすんと腰を付いて彼女の足首をしっかりと掴み、そしてエイヤっと勢いよく引っ張った。
「痛ぁいっ!!」
さらに大きな声で彼女が叫ぶ。
しかしこの際、多少の痛みには耐えてもらわねばなるまい。
彼女も覚悟したのか二回目からは声を上げなかった。
何度か綱引きのような動作を繰り返していると、不意に靴の側面のゴムが剥がれ落ちた。
そして次の瞬間、彼女の足がスッポリと線路から抜けたではないか。
僕は女生徒の荷物を脇に抱えると、彼女の手を取って慌てて踏切の外に退避した。
やがて何事も無かったかのように電車がやって来て踏切を通過する。
その様子を見て不意に笑いがこみ上げて来た。
「は、ははは、はははは」
それにつられたように女生徒も笑う。
「ふ、んふふ、ふふふふ」
緊張から解放された所為であろう。二人は何かに取り憑かれたかのように笑い続けた。互いの
そしてその
彼女の名前は
これが二人の
そして、この時から二人の間には海溝のごとき深い溝があったことはいうまでもない。
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