第9話

 手袋を忘れた。


 滅多にないことだから今日だけだと甘く見ていたら思いの外寒くて。


「冷たい…」


 無意識に泣き言が漏れると、合わせた手のひらを丸ごと包んでくれた。


 驚いて見つめたら、


「本当はずっとこうしたかったんだよね」


 照れたような表情で。


 繋いだまま歩く、冬の道。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る