第8話

 掴まれた腕が痛い。


 見透かされる目が怖い。


 その表情には苛立ちさえ滲んでいるのに、背後にあるドアはきっと鍵がかかっていない。


 追い詰めるだけ追い詰めて、最後の逃げ道は残している。


 狡い、という呟きを飲み込んだ。


「早く俺のものになれよ」


 囁く声だけが甘くて。


 本当はもう、とうに堕ちているのに。

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