LAST-IMPACT
志槻 黎
序
――序章――
浮き沈みする意識のなかで、ガァ、と聞き慣れない鳥の声がする。決して可愛らしくなく、むしろ不気味でさえあるそれは、慣れないながらに聞き覚えはあった。ふわふわした浮遊感に身を任せながら、あれはいつのことだったか……と思考する。
頭がおかしくなってしまったのか記憶は断片的にしか浮いてこなかったが、その断片的な欠片を繋ぎあわせて答えを探った。覚束ない脳から弾き出された候補はふたつ。《校内飼育小屋》で飼っていた鶏と、《遥か昔に家族と行った動物園》で見た色鮮やかな鳥――名前は失念してしまった――。鶏はこんな声で鳴かないから、答えはきっと後者なのだろう。曖昧な記憶を信じるなら、だが。
けれどどうして、そんなのが近くで鳴いているのだろう。あいつは確か、この極東列島にはいないって誰かが言ってた。それにしてもふわふわする。上下も左右もよくわからなくて気持ちが悪い。体もべたべたする。気持ち悪い。ここはどこだ?真っ暗でよくわからない。じたばたと藻掻く僕の額あたりに、ひとすじ汗が垂れ流れた。
そういえば僕の故郷は、こんなにも蒸し暑かったっけ。
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