変わった45日目



頭がボーッとする。

何か大切な事を忘れている気がする。

スマホで時間を見る為に握ると勢い余って壊してしまう。

あれ?スマホじゃなかったのかな。

身体を起こす。

なんだか全身が鈍っている気がする。

身体をほぐして部屋をでる。


一階に降りて、家族がいないことに気付く。


何か用事とかあったっけ?


新聞を取りに外に出る。


玄関を出るとでかい何かが襲ってきたので反射的に踏み潰す。ポストを開けるが何も入っていない。

まだ薄暗いから朝早いのかもしれない。


少し顔を洗うか。蛇口を捻っても水が出ない。

なんで?

仕方ないからタンクの水を使う。

顔を洗うとさっぱりした。


鏡を見る。いつもの俺がそこにいた。当たり前だな。

コップを取り出す。割れる。違うコップを取り出す。水を入れる。水を飲む。美味い。喉が渇いていたようだ。

もう一度飲む。頭が冴えてきた。そうだ。今は家族は全員出かけているんだった。それから……それから?





あれ?なんで俺生きてんだ?






目覚めた思考で現状について考える。まずは足の傷を見る。足に巻いていた輪ゴムとロープを外し血で赤く染まったガーゼをゆっくりと捲る。


ガーゼの下には少しの歯跡は残っているが傷は治っていた。


記憶ではかなりの深く噛まれた筈なのだが…。


もしかすれば何日も寝ていたのかもと思い確認のために時計の日時を見る。

だが、時計では2日しか経っていない。


どうも、異常なほどに回復が早くなっている様だ。

加えて身体能力も異様に高くなっている様だ。

コップがこんな簡単に壊れる筈が無いのに。


そういや、外で何か潰したような?


前回のことを踏まえて、玄関のチェーンをしてから開ける。



隙間から外を見ると、地面に頭が潰れた死体があった。

あれが恐らく外で潰したものだろう。


死体の頭は完全に潰れていて、ピクリとも動かない。


少々グロいが、そのままにすると匂ってしまうのでホウキを使い道まで押し出しそっとまた扉を閉める。


確認がすんだので、リビングに戻る。

その途中に他にも潰したものは無いかを考える。



…………そういやスマホは?



2階に駆け上がる。ドアを開けるとベットに粉々に砕けたスマホを確認する。

膝から崩れ落ちる。やっちまった。少し呆然としていたが、仕方ないと割り切る。

そうしないと、また落ち込みそうになるからだ。




でもやっぱり直ぐには割り切れないなぁ。





現状の整理をしよう。



俺はゾンビに噛まれた。そして足を縛るなどの悪足掻きをした。結果俺は異様なまでの治癒能力と身体能力を手に入れた。



………………整理してもよく分からんな。

悪足掻きが効いたのか?それとも元々俺には抗体があったのか?いや、そもそもな話、なぜ傷が治るんだ?


疑問は尽きないが、残念ながら俺一人で出る答えでは無い様だ。やはり他人を頼るべきなのだろう。


しかし、生きている人などこの一ヶ月半の間一度も見たことがない。


だが、それはこの辺りでという条件がある。

つまりここ以外ならいるかもしれない。



この街は都会ではないが、いや無いからこそ様々な物がある。大学もその一つだ。不審者対策として門があるため、現状かなり安全な場所の筈だ。生き残りがいるならそこだろう。


そしてこの大学は医学部や他の理系の学科がある。もしかしたら俺の体を使って薬ができるかもしれない。


此処から少し遠いが、そこに行って俺に起きた事を話そう。俺の事だけじゃなくこの街の状況が好転するかもしれない。


よし、善は急げと言うのだから準備出来次第行こう!

立ち上がり、コップの水を飲もうとする。


そしてまた割れた。




…………先ずは力の制御が先なのかもしれないな。


昔の人は言いました、急がば回れと。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る