エピローグ
「あなたの事が好きになったのかもしれません」のアフターストーリーに連動して非公開で書きかけになっていた本作のエピローグも公開したいと思います。
この話では本作終了から「あなたの事が好きになったのかもしれません」のアフターストーリー6に至るまでを描いてます。
内容的にハッピーエンドエンディングな展開となっていますので興味が無い方はそのままスルーいただいても問題ございません。
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若菜との再会から約2年が過ぎた。
昨年、僕は専門学校を卒業してから勤めていたゲームソフト会社を退職し、親友"鶴間大和"の経営するソフトハウスに転職をした。
大和が学生時代に恋人の栗平と立ち上げたソフトハウス"Haruma"
主にスマホ向けのアプリを作っている会社だったけど事業拡大で念願だったオリジナルゲームを作ることが決まった。
それに伴ってゲーム会社に勤めていた僕が誘われた形だ。
昔、話した僕の夢の事覚えててくれたんだ。
給料は少し下がるけどやりがいがありそうな仕事だったことと自分の可能性をもう一度試してみようと思ったんだ。
気持ちだけはまだまだ若いからね♪
オフィスは横川駅の近くにある雑居ビルの1室。
ちなみに一応肩書は副社長だけど、社員は僕と大和と経理兼広報担当で今は大和の奥さんでもある鶴間春姫、そして社員は大和の高校時代のコンピュータ部の後輩という山本君と高木君の5人だけ。
近々プログラマはもう少し増員予定だけど実質、僕も大和も肩書は別として現役プログラマとして大忙しな感じだ。
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「忍君 はいお弁当!」
「ありがと若菜」
若菜とは再会後しばらくして同棲を始めた。
若菜と一緒に居たかった僕が頼んだんだ。
横川にある実家に住んでいた若菜も了承してくれて僕の住んでいるマンションに引っ越してきてくれた。
もちろん彼女のご両親にも挨拶はした。
高校時代に何度か会ったこともあったし、僕らの事はご両親も知っていたので会って早々に謝罪をされてしまったけど、もう気にしていない旨はちゃんと伝えた。
同棲についても複雑な思いはあったかもしれないけど了承し"娘を頼みます"と言ってくれたしね。
2年間一緒に暮らし最初の方こそ僕に引け目を感じ常に遠慮がちだった若菜も今ではお互い言いたいことを言いあえる関係には戻れたと思うし、若菜も以前の様な明るさを取り戻してきていた。
もっとも僕らはもう大人だし高校時代の様な付き合いじゃない。
一緒に居ればお互い嫌なところも見えてくるし喧嘩することもあった。
だけど、僕らはそのたびにお互いを理解し問題を解決してきた。
もう以前の様に別れたくはない。
その想いは一緒だった。
ただ・・・僕からのプロポーズは未だに受け入れてもらえていない。
いや、正確に言うと"私にその資格はない"と言う形で断られていた。
同棲を初めて1年目。
若菜にプロポーズをしたけど駄目だった。
若菜自身が自分を許せないんだそうだ。
僕としてはケジメを付けたい思いもあったんだけど、最近は若菜が望むのなら今の関係のままでも、無理をして結婚はしなくてもいいのかなと思い始めていた。
そんな時、僕と若菜にとって大切な友人である開成と大室さんから結婚の報告を受けた。
付き合い始めの頃から色々と2人からは相談も受けていたし、僕と若菜の今があるのも彼らが居たからだ。
だからこそ、この知らせは自分たちの事の様に嬉しかった。
「良かったね。渋沢君と小春ちゃん」
「そうだな・・・」
本当は僕達だって・・・そんな思いもあったけどその気持ちは自分の中だけに留めた。
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迎えた2人の結婚式当日。
式は2人の人柄を表すかのような楽し気で和やかな雰囲気の中で行われた。
フルールでの同窓会以来となる懐かしい仲間とも再会できた。
そして、式の終盤に行われた大室さんからのブーケトスは狙ったかのように(というか狙ってたよな)若菜へと届けられた。
開成と大室さんは驚いている若菜を見て微笑んだ後、僕の方を見た。
"ありがとう"
僕は無言で2人に礼を述べお辞儀をした。
何だか2人に勇気を貰った気がした。
結婚はゴールってわけじゃないし(結婚式で言う言葉じゃないけど)必ずしも幸せになるというわけじゃない。
最近は今のままでも2人が幸せなんだからこれでいいんじゃないかと思っていた。
いや、自分に言い聞かせていた。
でも、若菜の心に僕への贖罪の気持ちや自分を許せない気持ちが残っているのならそれは本当の幸せじゃないのかもしれない。
だからもう一度・・・
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「素敵な式だったね♪」
「あぁ」
フルールで行われた2次会の帰り道。
僕はマンションへ向かう道を若菜と2人で歩いていた。
若菜の手に持つ紙袋には結婚式で貰ったブーケが入っていた。
凄く嬉しかったみたいで披露宴や2次会の時もずっと袋を持っていた。
「なぁ若菜」
「何 忍君?」
「僕たちも結婚しよう」
「え!?・・・・・・で でも、私は・・・」
「若菜の気持ちは知ってる。
でも、今日の式を見てあらためて思ったんだ。
やっぱり僕は若菜が好きだ。そして結婚したいって」
「・・・・」
「確かに結婚することが全てではないと思うし、もしかしたら今のままの方が楽で幸せなのかもしれない。
でも若菜が僕に対して罪の意識を持ち続けるのは違うと思ったんだ。
自分を許せないって言うのなら僕は若菜が自分を許せるようになるまで、いつまでも待つよ。だから・・・」
僕の言葉を聞いて思いつめたように俯く若菜。
やっぱり今回も・・・
「・・・私から告白したんだもんね。また付き合ってくださいって」
「若菜?」
「私ね。忍君と一緒に居られるだけで嬉しかったんだ。もう諦めていたのに忍君と一緒に居られるんだって。
だけど私は忍君に酷いことをした。だからこれ以上幸せになったらいけないんだって思う様にしてたの。
でも、今日ね。小春ちゃんを見て凄く羨ましかった。
好きな人と一緒になれて、凄く幸せそうで・・・
そう思ってたらブーケが目の前に飛んできて・・・
最初は取るつもりなんてなかったんだけど・・・手に取ってた。
いいのかな忍君。私も幸せになって?」
目に涙を浮かべて僕に問いかける若菜。
そんなの答えは決まってるじゃないか。
「・・・いいに決まってるじゃないか。"一緒に"幸せになろう若菜」
「・・・・ありがとう・・・忍君」
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