あの時の君と
ひろきち
あの時の君と -改訂版-
第1話 出会いと別れ
需要があるかはわかりませんが、加筆した改訂版を作ったので少しずつアップします。ストーリーや結末は変更ありません(全6話予定)
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僕の名前は有坂 忍。
今年の春、川野辺高校を卒業した。
そして、僕には2年半付き合った同級生の彼女が居た。
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高校1年生の春。
新しい教室に新しいクラスメイト。
その中に彼女は居た。
彼女は僕と同じ中学出身の鮎川と楽しそうに話をしていた。
茶髪に少し気崩した制服。
言葉使い含め派手目に見せているけど何処か落ち着かないような仕草。
そして時折見せる可愛いらしい笑顔。
僕は何となく彼女に惹かれ目で追ってしまっていた。
今思えば一目惚れだったのかもしれない。
その後、僕は知り合いだった鮎川経由で、彼女たちのグループの輪に入っていった。ちなみに彼女と鮎川とは入学式の時に知り合って仲良くなったらしい。
彼女たちのグループには、鮎川と同じバスケ部の大室と栗田、それに川北中出身で栗田とはバスケ繋がりの恩田、そしてクラスは違うけど恩田の幼馴染という富田さんが居た。
皆個性豊かで面白い奴らだった。
そんなグループで僕は彼女の事を色々と知った。
彼女が隣の市の中学出身であること、クラスの中では明るく堂々としているのに1人になると真面目で控えめなところ。
意外と言っては悪いけど見た目に反して礼儀正しいことや皆で遊びに行くと色々と気配りが出来ること、そして意外と内気で寂しがり屋なところ・・・
僕はそんな彼女に少しずつ惹かれていった。
そして5月に行われたスポーツ大会の後、僕は彼女に告白をした。
「山下さん。あなたの事が好きです。付き合ってください」
僕は中学時代テニス部に所属していてそれなりにモテたし告白もされたことはあった。でも自分から告白したのはこれが初めてだった。
こんなに緊張するものなんだな。
「私・・・告白とかされたの初めてで・・・・私も有坂君ってカッコいいなぁって思ってて・・・私で良ければ」
多分これが素なのかもしれないけど、普段とは異なり顔を赤くしながら弱弱しい口調で彼女は僕との交際をOKしてくれた。
クラスでも人気があった彼女は僕にはもったいない位だったのかもしれないけど僕の思いに応えてくれた彼女を僕は全力で愛した。
遊園地に映画等デートもたくさんした。グループのみんなで夏祭りに行ったり河原で花火もした。本当毎日が楽しかった。
それに、彼女は僕の所属していたテニス部の試合にも毎回欠かさずに応援に来てくれた。可愛い彼女が応援してくれるのは誇らしくもあった。
そして・・・暑い夏の日。僕の部屋でお互いの初めても経験した。
もちろん仲が良かった友達にも彼女を紹介した。
同じクラスの渋沢はもちろん、隣のクラスの太田、そして倉北学園に通う鶴間。
皆小学校の頃からの遊び仲間だ。
彼女を紹介すると皆"このリア充め"とからかいながらも祝福してくれた。
そして、皆がうらやむ仲の良いカップルとして過ごし卒業後は同じ大学に行く約束もしていた。
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高校2年生
2年生のクラス替えで僕たちは別々のクラスになってしまった。
若菜は太田と同じクラスだった・・・
クラスが別になっても昼休みは一緒にお弁当を食べたり放課後一緒に帰ったりと関係はもちろん継続していた。
ただ、夏の大会を経て僕はテニス部の部長に就任した。
もちろん嬉しかったけど責任のある仕事と重圧。忙しい日々を送る中で若菜と会える時間も以前より少なくなってしまった。
またストレスから若菜に心無い言葉であたってしまうこともあった。
それが結果的に若菜に寂しく悲しい思いをさせてしまったのかもしれない・・・
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そして、高校3年生。
また若菜とは別のクラスだった。
3年生になると部活だけでなく受験に向けた勉強も佳境に入った。
若菜とは一緒に勉強をするなどして会う時間は作っていたけどお互い志望校への合格にはあまり余裕もなく恋人らしい会話やデートをする回数も少なくなっていた。
そして・・・クリスマス。
付き合い始めてからのクリスマスは毎年2人で過ごしていた。
受験前の大切な時期だったけど、僕は彼女と高校最後の思い出をつくるため今年も一緒に過ごさないかと声を掛けた。
でも、高校最後という事でクラスの友達と女子会をするという理由で断られてしまった。
クラスが別になり彼女の交友関係も変わったんだろうと諦め、当日は知り合いの店でバイトをして次のデート資金を稼ぐことにした。
が、バイト先のショーウインドー越しに僕は見てしまった。
親友の(太田)健也と僕の彼女である若菜が楽しそうに腕を組んで歩いているのを。
思わずお店を出た僕は前を歩く2人に声を掛けた。
嘘であってほしい見間違いであってほしいと思いながら・・・・
「若菜!」
だけど、人違いであって欲しいという思いは裏切られ健也と共に若菜は振り向いた。
そして手を繋いだまま僕を見て驚く二人。
「そういう事なのか?若菜、健也」
「・・・・すまん」
「・・・・ごめん・・なさい」
2人はうなだれたまま僕に返事をした。
あっさり認められた。
言い訳もしないんのか。
「何だか僕だけバカみたいだな・・・・いつからなんだよ・・・」
「・・・」
「答えられないんだ・・・若菜。もうお別れなんだね。
・・・・今まで楽しかったよ。 健也と・・・仲良くな。
健也。お前若菜を泣かせるような事だけはするなよ」
無言で僕を見つめ立ち尽くす2人。
僕はそのままバイト先に戻りトイレに籠って独り泣いた。
スマホには若菜からのメールや電話の着信が沢山来ていたけど全て無視し着信も拒否にした。
メールは何通か見えたけど謝罪を書いたものだった。
今更謝罪なんて要らない。
もう君は僕の好きだった若菜じゃない。忘れたい。
信頼していた親友と最愛の彼女に裏切られた最悪のクリスマスだ。
ふさぎこむ僕を家族や友人は心配してくれたけど、やはり気持ちは晴れなかった。
冬休みが終われば、学校が始まる。嫌でも若菜や健也とも顔を合わせることになる。ただ、今は辛い・・・
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そして大学試験を控えた3学期が始まった。
3年生は受験があるので出席は自由ということもあり、僕は最低限の出席しかしなかった。
若菜や健也からは何度か声を掛けられたけど「ごめん」と2人には近づかなかった。
もうあいつらには関わりたくない。いや・・・今は2人の顔を見るのが辛い。
クラスでも若菜と健也の事はすぐに噂となり、僕への同情と若菜たちへの非難の声が出る様になった。
特に僕とも若菜とも仲良くしていた大室と渋沢は自分の事の様に2人を責めた。
もしかしたら若菜は責められて泣いていたかもしれない。
渋沢。
あいつは普段温厚でおとなしい奴なのに僕のために怒鳴り声をあげてくれていた・・・あいつとは小学校の頃からの友人で僕が若菜に一目惚れした時も相談したし、付き合い始めたことも一番喜んでくれていた。
それにあいつは健也とも仲は良かった。だから余計に僕を裏切った2人を許せなかったのかもしれない。
大室。
あいつは高校に入ってからの友人だけど気さくなやつで男友達のように僕達とも遊んでいた。そして僕と若菜のカップルは自分の理想だと言ってくれていた。
自分はがさつで男っぽいから当分彼氏は出来ないかもしれないけど、いつか2人の様になりたいと・・・
でも・・・この時の僕はもうどうでもよかった。
そういった同情も欲しくはなかったんだ。
だから学校に行った日もみんなとは極力顔をあわせないように屋上や図書室で時間を潰すようになっていった。誰にも関わりたくない。
そして、同時に考えた
"どうして若菜は健也を選んだんだろう"
"僕が何かしてしまったんだろうか"
"だとしても若菜は何で僕に何も言ってくれなかったんだろう"
"もうあの頃には戻れないんだろうか・・・・"
若菜や健也の事を忘れようと思ったけど忘れられない日々が続いた。
受験。
若菜と一緒に大学へ通うため一生懸命勉強していたけど進路も変えた。
僕は大学受験をやめ、友人の影響で興味をもっていたプログラマーの道に進むため専門学校に進学することにした。
大学に進学してプログラムなどを学ぶ道ももちろんあったけど、この時は早く社会に出てこの町を離れたいという気持ちでいっぱいだった。
親も自分の好きなことをしなさいと許してくれた。
そして、3月。
僕は高校を卒業し川野辺の町を離れた。
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