しっぽをたずねて
「誰よりもまず、あの子たちに会いたい」
空の道を 踏みしめ歩く
足元を小さな雲が通りすぎる
見えてきたのは、とても澄んだ青色と
パステルカラーのお花たち
空の青も日の光も目に眩しすぎず
すべての光に優しく迎えられる
なんだかぜんぶ虹色みたい
どこまでも、どこまでも広がる
お花畑の中を
風に誘われつつ歩く
しばらくすると、動物たちの町に着いた
建物ではなく、綺麗なオブジェが
ところどころにある
草原と、美しい丘が見える
色々な種類の動物たちが
のんびりしたり、じゃれあったりしている
その中にいた一羽のカラスが
私の姿を見つけ、飛んできた
「あら、お久しぶりです!
私のことを、覚えていますか?
いつもあなたに
声をかけていただいていた
カラスです」
話しかけられ、その子のことを思い出した
私も嬉しくなってあいさつを返す
「久しぶりだね!
また会えるなんて嬉しいよ
元気にしていたの?」
カラスをふわりと抱き止めた
この子はご飯をとるのが上手ではなくて
いつもゴミをあさって、
町の人間たちから怒られていた
そんなこの子に
私はいつも声をかけていた
「おはよう」
「ごめんね、
君にご飯はあげられないの
でも応援しているよ」
「こんにちは、いいお天気だね」
……と、いうふうに
カラスが言った
「あなたに優しくしてもらったこと、
ずっと忘れませんでした
また会える日を、楽しみにしていました」
「私もだよ、
覚えていてくれてありがとう」
私たちは、たくさん話した
「また、遊びにくるね」
私は丘に囲まれた草原の中を
再び歩きだした
空気は優しく、暖かい
夢みたいな色の川や森も見えてきた
木漏れ日が空の道に当たる
小さい頃に遊んだ川や森を思い出す
しばらくすると
蝶々やカマキリ、バッタに囲まれた
もしかして、家の庭にいた子たちかな?
手を出すと蝶々が止まった
ゆっくりと羽を閉じたり開いたり
その姿に、癒される
やがて虫たちは飛び立って
楽しそうに、お花畑へと向かった
私も歩く
はずんだ心で
ちゃぷちゃぷと川を渡る
空の上で、空を見上げながら
こんどは、牛や豚や
鶏がいる草原に着いた
馬や猫、ハムスターの姿も見える
池にはコイや金魚もいる
私は、牛たちに近づいた
きっとこの子たちは
私に食べられた子たちだ
私はその場に座り、
彼らに向かって手を差し出す
「こんにちは
ごめんね、
痛かったでしょう
ありがとう
ごめんね」
この空の上にいる人と動物たちは
もう誰も苦しまない
恨んでいない
だから、幸せ
「いいんだ、今はもう
あなたの力となれたことが嬉しい
自分の一生を
誇りに思っているよ」
牛はそう、言ってくれた
私は彼を抱きしめた
豚と鶏にも手を差し出すと
彼らは無言のまま
私の手に触れてくれた
許してくれて、ありがとう……
私はまた、歩きだした
鳥が飛び、
マウスやモルモット、ウサギが駆ける
キツネがネズミをなめてあげ
ライオンとヌーが寄り添い
タカが小鳥を抱き
ヘビが頭の上にカエルを乗せている
ささやくような、
温かな笑いがこだまする
海や島が見えてくる
お花畑の中を、私は歩き続ける
海の生き物たちの息づかいも
聞こえてくるよう
やがて見渡すかぎりの草原に着いた
むくむくと沸きあがる白い雲
夏の空みたい
汗もかかないし疲れもしないけれど
ふと足が止まった
どこまでも広がる美しい緑
その中に宝石のように散りばめられた花々
さえぎるもののない、
穏やかな空に響く風の音
こんなに綺麗だったんだ
まるで楽器の音色のよう
広がる緑の奥
空との境界線に やがて
二匹の動物の姿が現れた
二匹がこちらへ向かってくる
足音がだんだんと近づいてくる
私はその姿を見て
駆け出そうとした、けれど
足に力が入らない
膝が震えて
その場に崩れおちた
その時がきたら
走って迎えに行こう、
そして笑顔で抱きしめよう
ずっとずっと、そうするつもりでいたのに
ごめん、もう一歩も動けないや
大声をあげて、泣きだしてしまった
ぼろぼろと、涙がこぼれ落ちる
腕の中で、あの子たちの呼吸が止まった時
冷たい体を、なで続けたあの日
小さくなった骨を拾った時
もう二度と、
あなたたちの体を抱きしめることも
温もりを感じることもできないのだと
絶望しかけて、
それでも
「天国」を信じていた
だから前を向けた
必ずまた会えるのだ、と
二匹が全速力で駆けてくる
私は手を広げて
やわらかい体を抱き止めた
グッと力が入りそうになるのを
どうにかこらえて
優しく、優しく抱きしめる
とめどなく流れる涙を
二匹がなめてくれた
……温かい……
久しぶりの、この感触
涙で視界がかすむけれど
しっかりと二匹の目を見つめて
こう言った
「これからは、ずっと一緒だよ」
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