第35話
*
食事が終わり、入浴の時間になった。
俺たちは着替えを持って、キャンプ場近くにある入浴施設に向かっていた。
「風呂はちゃんと入れるんだな」
「こういうキャンプだと、ドラム缶風呂にも憧れるけどな」
「あぁ、確かにな」
「女子風呂覗き放題だからな!」
「女子までドラム缶風呂に入る訳ないだろ?」
くだらない話しをしながら、俺たち入浴施設に到着した。
今は俺たち二組の時間なので、既にクラスメイトが脱衣所で服を脱いでいた。
「よぉ、お前らも来たのか」
「あぁ、なんか混んでるみたいだな」
「まぁな、でも結構風呂広かったから大丈夫だと思うぞ」
脱衣所でクラスメイトからそんな話しを聞き、少し風呂が楽しみになってきた。
デカい風呂に入るのは久しぶりだ。
「はぁ~あ、今日は疲れたなぁ~一日歩き通しだったし」
「結構な距離歩いたしな、運動部の奴らは平気だろうけど、俺たち帰宅部は明日辺り筋肉痛だろうな」
「そうよねん、嫌だわ足が太くなっちゃう」
「なんでも良いが早乙女、気色悪いからタオルで胸を隠すのをやめてくれ」
「いやん、そんなに見たいの? 私の胸毛」
「見るかっ!!」
服を脱ぎ、俺たちは浴場に向かう。
確かに先程クラスメイトが言っていたとおりだ、風呂は大きく手足を伸ばしてもまったく狭さを感じない。
浴場には既に10人ほどの人がいたが、それでも狭さを感じなかった。
「いや、広いな」
「じゃあ、ちゃっちゃと体洗って湯に浸かろうぜ~」
「そうね、私も体を隅々まで洗わないと……」
俺たちは並んで座り、体を洗い始める。
「早乙女、洗顔貸してくれ」
「良いわよん」
「ん、サンキュー……ってなんだこれ? 見たこと無い洗顔だな」
「あぁ、それレディースのだから」
「お前、レディースの洗顔なんて使ってるのか? 高いだろ?」
「それ一本で2000円するから、大切に使ってね」
「高っ!!」
「美顔ローラーも有るわよ?」
「要らねーよ、学校行事なのに色々持ってきてんだなぁ……」
「お肌のケアは怠れないのよ」
「お前は男だろ……まぁでも折角だし借りるわ……」
いつも俺が使っている洗顔よりもなんだか洗い心地が良い気がした。
肌の事になると早乙女は女子以上に気を遣ってだな……。
「そこら辺の女子には負けない肌感よ!」
「おぉ、なんかすげーな……男だけど」
「心は女よ!!」
「あっそ」
相変わらずだな早乙女は……。
そんな事を考えながら、体を洗っていると隣の女子風呂から女子達の声が聞こえてくる。
「あはは! 八島さん胸大きい~」
「………普通」
「いや、普通じゃないって! 触っても良い?」
「ん……良いよ」
いや、八島何やってんだよ。
まぁ、女子同士だから別に良いんだけどさ……そんな会話をしてたら、うちのクラスのバカ共が……。
「おい、聞こえるか!!」
「あ、あぁ! 八島さんの胸……ゴクリ……」
「ま、マジか……あの胸がこの壁の向こうに!?」
ぞろぞろと女風呂と男風呂を分ける壁の前に男達が集まってきた。
何をやってんだ?
てか、いつの間にか強も居ねーし!!
「強!?」
「よし、お前ら! 肩車で行こう!」
「なるほど!」
「よし、それで行こう!」
いつの間にか強は壁の前に集まる男子達とどうやって女風呂を覗くかの相談を始めていた。
アホか、あんなデカい壁を肩車で越えるなんて無理に決まってる。
「はぁ……あいつら何やってんだか……」
「もう、本当に男ってやーねー」
「お前も男だぞ、早乙女……」
俺と早乙女は体を洗い終え、湯に浸かる。
「はぁ~いい湯だなぁ~」
「あぁ~ん……そうねぇ~」
「気色悪い声を出すな、寒気がする」
「もう、酷い事言わないでよ!」
俺たちがゆっくり湯に浸かっている中、強達は肩車で壁を越えようとしていたのだが……。
「お、おい! 足下が滑るぞ!」
「が、頑張れ! この向こうに俺たちの天国があるんだぞ!!」
「そ、そうだな!」
「強! どうだ!?」
「も、もう少しでとど……く………あっ……」
「「「「あっ……」」」」
どかーん。
大きな音と共に、クラスの男子達で作った肩車のタワーは崩れ去った。
「イテテ……クソッ! あと少しのところで!!」
「今度は俺が一番上になる!」
「いや、俺が!」
「一番軽いのは俺だ!」
「おい! リーダーは俺だぞ!!」
一回失敗してもまだ諦めていないようだ。
このやる気をもっと他のところで使えば良いのに……。
「はぁ……何やってんだか……」
「琉唯ちゃんはあぁ言うのに混ざらない
の?」
「成功する見込みも無いのに混ざりになんか普通行かないだろ?」
「まぁ、そうだけど。琉唯ちゃんは結構そういうところドライよね?」
「まぁ、女子の体に興味が無いわけじゃねーけど、少し感がえればあの壁を越えるなんて無理だって分かるじゃねーか、だから俺は混ざりに行かないの」
「ふぅ~ん、じゃあ女子の体には興味はあるのね?」
「そりゃあ俺だって男だ、人並みに興味だってある」
「あら、そうなの? てっきりこっちの世界に来たのかと思ったわ」
「それは絶対にない!」
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