第34話

 そんな話しをしていると、急に誰かが俺の背中を叩いてきた。


「よっ! 木川君! 頑張ってるかい?」


「イテッ! おまえなぁ……」


「いやぁー、まさかあそこから逆転されるなんてねぇ……何をお願いするの?」


「それはこの高石に聞いてくれ」


「え? なんで?」


「色々あって、ジャンケンで一人の願いを叶える事に決まってな、それで勝ったのが高石だったんだ」


「あ、そうだったんだ、まぁ確かに、あの三人が居るならそうなるだろうね」


「聞こえてたんだな・・・・・・」


 まぁ、あれだけ騒いでたらそりゃあ聞こえるよな……。


「てか、お前の班もカレー作ってんだろ? こんなところで油売ってて良いのか?」


「いやぁ~戦力外通告を受けちゃってさぁ~」


「お前・・・・・・何をしたんだよ・・・・・・」


「え? ただカレーの中に少しスパイスを・・・・・・」


「初心者が良くやるやつな・・・・・・お前も女子なら料理くらい覚えろよ・・・・・・」


「あ! その女子ならっての良くないよ! 今の世の中、男の専業主婦も居るくらいなんだから!」


 なんか話しの趣旨がズレてきたな・・・・・・。

 

「分かったからお前はもう戻れよ、俺は忙しいんだ」


「ぶーケチー」


 上屋敷はそう言って頬を膨らませ、不満そうに自分の班の場所に戻っていった。

 まったくあいつは・・・・・・。


「ねぇ、上屋敷さんとはどんな関係なの?」


「え? いや、どうもこうも、ただの友達だよ……それよりさっきの話しだけど・・・・・・」


 バキッ!

 俺がそう言いかけた瞬間、高石さんは笑顔でカレーのルーを真っ二つに折っていた。

 いや、カレーのルー折った音じゃないよね?


「そうなんだ・・・・・・後は煮込んで終わりだし、この話はまた後でしましょう」


「お、おう・・・・・・」


 終始笑顔のままそう言う高石。

 俺はそんな高石がますます怖くなり、言う通りにする。

 程なくしてカレーが完成し、ご飯も炊き上がった。


「「「「「いっただっきまーす!!」」」」


 席につき俺たちは自分たちで作ったカレーを食べる。

 うーん、こういう時に食べるカレーは何故か美味しい。

 多分味は微妙なのだが・・・・・・。


「美味いなぁ! やっぱりあれか? みんなで作ったから美味いのか?」


「こういう時に食べるご飯はなんだって美味しいのよ」


「まぁ、作ったのはほとんど木川君と高石さんですけどね」


 そう俺と高石に言う横川。

 なぜか知らないが、俺は高石の隣でカレーを食べていた。

 正直、カレーを作っていた時の会話から高石が怖くて仕方ない。

 こいつとはなるべく離れていたいのだが・・・・・・。


「美味しいね、木川君」


「あ、あぁ・・・・・・そ、そうだな・・・・・・」


「・・・・・・」


 俺にそう言ってくる高石。

 そんな俺と高石を八島はジーッと見ていた。

「木川・・・・・・」


「ん? どうした八島?」


「ちょっと・・・・・・」


 俺は八島に呼ばれ、物陰の方につれて行かれた。


「・・・・・・なんかあった?」


「は? 別に何もないぞ? どうした?」


「ん・・・・・・それなら良い・・・・・・」


「なんだよ、お前が俺の心配なんて珍しい……」


「別に・・・・・・なんか、木川変だった・・・・・・」


「そうか?」


 俺は八島嘘をついた。

 まさか八島に気がつかれるとは・・・・・・見てないようで、こいつ以外と見てるのかな?


「俺はいつも通りだ。お前こそ、テント中で全裸とかになるなよ」


「ん・・・・・・テントだから大丈夫」


「その理屈はなんだよ・・・・・・」


 本当に大丈夫かこいつ?

 俺達は話しを終えた後、すぐに自分たちの席に戻った。

 しかし、戻ってからがもっと面倒臭かった。

「あ、帰ってきた!」


「おい木川!! お前やっぱり八島さんとぉ~!!」


「良い度胸だ、そんなお前に敬意を表して苦しまずに一撃で仕留めてやろう」


「このリア充が! 死ね!!」


「なんでそうなるんだよ!!」


 俺と八島が二人で消えたから、クラスの男共が変な誤解をしてやがった・・・・・・。


「だから! 俺と八島はそんな関係じゃないって、何度言ったら・・・・・・」


「本当かぁ~」


「今正直に言えば、苦しまずに殺してやるぞ?」


「結局殺すのかよ!」


 やっぱり朝のアレが悪かったみたいだな・・・・・・。


「はぁ・・・・・・」


 俺がため息を吐きながら、クラスメイトの問い詰めに答えていると、またしても高石が俺のフォローをしてくれた。


「みんな、あんまり男女の事を詮索しちゃダメだよ?」


「うーん……高石さんがそう言うなら・・・・・・」


「まぁ、ここは高石さんに免じて・・・・・・」


「なんで高石の言うことは聞くんだよ……」


 美少女には優しいクラスの男子達。

 俺はまたしても高石に助けられたが、あまり感謝の気持ちは無かった。

 脅しされてる相手から助けられても感謝なんて出来ない。


「大変だね、木川君も」


「……まぁな・・・・・・」


 俺は高石と目を合わせなかった。

 こいつ、本当に何を考えてるんだ?

  

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