第32話

「三位は二年一組四班だ!!」


「おぉ~やったよぉ-!!」


 どうやら上屋敷の班だったらしい。

 向こうで騒ぐ上屋敷の姿が見えた。

 嬉しそうにはしゃぎながら、学食の食券を受け取っている。

 良いなぁ……。

 その後も二位の発表が続けて行われ、ついに一位の発表になった。


「さて、それでは・・・・・・一位の発表だ!! 優勝した班には約束通り、教員と生徒会が叶えられる範疇でなんでも願いを叶えてやるぞ!!」


「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 何やらみんなが盛り上がっている。

 俺はそんな事よりも今は気になる事があるのだが・・・・・・。

 俺はそんな事を考えながら、高石の方を見る。

 そんな中、先生が一位の班を発表する。


「優勝は・・・・・・二年二組! 第四班!」


「え?」


 俺は自分の耳を疑った。

 二年二組の第四班は俺の班だ。

 何かの聞き間違いかと思ったが、強が嬉しそうな顔で俺の背中をバンバン叩いてきているので本当なのだろう。


「やったぞ琉唯! 優勝だ!!」


「やりましたね!! これでぐふふ……」


「やったじゃ無い琉唯ちゃん! これで男子トイレではぁ・・・・・・はぁ……」


 こいつらの願いを叶えて良いのか不安は残るが、それでも一番になるのは嬉しい。

 班長の俺は急いで前に出て先生から商品を受け取る。


「おめでとう! これが何でも叶う券だ! 班員で相談して使うように!」


「え? 一人一個じゃないんですか?」


「何を言っている? 流石に一人一個は無理だ。班で一個だ!」


 そう先生が言った瞬間、早速うちの班ではまた別なバトルが始まっていた。


「一番頑張ったのは俺だ! 俺の願いを叶えるべきだ!」


「何を言ってるんですか! 私が宝を見つけた回数が一番多いです!」


「何を言ってるの! 私が一番動いてたじゃない!!」


 なんて醜い争いなんだ・・・・・・。

 俺はそんな事を思いながら、注目される自分の班に戻っていく。


「ちなみに叶えたい願いは明日まで決めておくこと! 期日以外ではその券は使えんぞ!」


 まぁ先生達にも準備とか有るだろうしな・・・・・・。

 班に戻ると例の如くあの三人がもの凄い形相で俺に詰め寄ってきた。


「なぁ琉唯! ここは俺の願いが優先されるべきだよな!」


「私ですよね!?」


「何を言ってるの私よ!!」


「お前ら・・・・・・とりあえず静かにしろ、まだ先生が話してんだろ・・・・・・」


 俺はそう言って三人を静かにさせ、先生の話しを聞く。


「それでは今から休憩した後、各班で晩飯の調理を始めてもらいます」


 家庭科の先生がそう言った後、生徒はそれぞれの班のテントに戻り休憩に入った。

 俺たちも皆と動揺にテントに戻ろうとしたのだが・・・・・・。


「だから保健の先生と!!」


「いえ、男子との絡みを!!」


「男子トイレでいけない事を!!」


 先程まであんなに協力しあっていたのに、この手のひら返しはなんだろう・・・・・・人の欲望は醜い・・・・・・。


「お前らいい加減にしろ! さっさとテントに戻るぞ!!」


「琉唯! お前もしかして願い独り占めにしようとか考えてるんじゃないだろうな!!」


「はぁ?」


「木川君! 独り占めは許さないよ! 私にも男子の絡みを!!」


「だからちげーって!!」


「何でも良いけど、琉唯ちゃんちょっとトイレに行かない? 大丈夫何もしないから」


「早乙女! おまえ俺に何をする気だ!」


 ダメだ・・・・・・こいつら自分の事しか考えてない・・・・・・。


「だぁぁぁ!! もう公平に全員でジャンケンで決めるぞ! 恨みっこなしだ!」


「良いだろう! それなら公平だ!」


「そうですね! 私も文句はありません!」


「何でも良いから琉唯ちゃん、さっさとトイレの個室に行きm・・・・・・」


「はい! じゃーんけーん・・・・・・」


 俺たちは公平に皆でジャンケンをした。

 その結果、願いを叶える一人が決定した。


「えっと・・・・・・私で良いのかな?」


 勝利したのは高石だった。

 残念ながら俺ではなかったが、他の三人の願いが叶わなくて本当に良かった・・・・・・。


「くそっ!! なんで俺はパーを出してしまったんだ!!」


「なんで私はパーを!! 絶対にいつもならチョキだったのに!!」


「琉唯ちゃん、早くトイレにいきましょう。大丈夫、何もしないから」


「早乙女、お前は途中から趣旨変わってんじゃねーか!!」


 しかし、これで皆文句ないだろう。

 俺は高石に券を渡す。


「ほら、高石」


「うん、ありがとう。じゃあ何をお願いするか考えておくね」


 そう言って笑みを浮かべる高石。

 その笑顔に俺はなんだか恐怖を感じた。

 

「何をお願いしようかな・・・・・・」


 高石は俺にそう言いながら、またしても小悪魔のような笑みを浮かべる。

 こいつ・・・・・・本当に何を考えてるんだ?

 俺はそんな事を考えながら、早乙女と強と共に自分たちのテントに戻っていった。


「はぁ……疲れたな」


「うぅ・・・・・・俺の野望が・・・・・・」


「はぁ・・・・・・また琉唯ちゃんに振られちゃったわ・・・・・・」

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