第31話

 昼食を終えた後、俺たちの班は昼食の前以上にやる気をだしていた。


「琉唯! 問題は!?」


「また数学だな」


「よし! 高石さんお願いします!」


「うん、まかせて」


 こんな感じで役割分担を決めて、みんなで協力して宝を探す。

 他の班の連中も放送を聞いたらしく、みんな目の色が変わっていた。

 ペースを上げたことで俺たちは昼食が終わって直ぐに宝を見つける事が出来た。

 

「なんか味気ないな……ボールに宝って書いてあるだけって……」


「でも、宝は宝だ! で、ポイントは何ポイントだ?」


「えっと75ポイントだな」


 確か上屋敷達は50ポイントの宝を三個見つけたって言ってたな……。

 もしかしたら、ポイントは三種類位がランダムに分けられてるのか?


「よし! とりあえずは一個だ! 次行くぞ!!」


「「おぉぉぉ!!」」


 やる気が有るのは結構だが、俺たちとの温度差にも気がついて欲しい……。

 まぁ、でも・・・・・・午前中と違って達成感も出てきたし、良い傾向なのかもしれないな。 俺もようやく楽しくなってきたし・・・・・・。


「みんな楽しそうね」


「あいつらの場合は完全に私欲だけどな・・・・・・」


「それでも午前中より活気があって良いんじゃ無い?」


「まぁな・・・・・・」


 心なしか八島も結構やる気のようだ。

 いつもはやる気無さそうな感じなのだが・・・・・・。


「ねぇ、木川君」


「ん? なんだよ高石」


「木川君と八島さんって・・・・・・隣同士だよね?」


「え? あ、あぁ・・・・・・席がってことか?」


 俺がそう言うと、高石はフフフと笑いながら、俺の耳元でこっそりと呟く。


「部屋がってこと・・・・・・」


「!?」


 俺は驚き、咄嗟に高石の方を振り向いた。

 高石は小悪魔のような笑みを浮かべながら、俺の顔を見ていた。

 この女・・・・・・なんでそのことを!?

 俺がそんな事を思いながら固まっていると、強が大声で俺を呼ぶ。


「おい! 何やってんだ琉唯? 早く行くぞ!」


「ほら、呼んでるよ。早く行こう」


「あ、あぁ・・・・・・」


 高石からそう言われ、俺は強の元に向かった。

 歩いている最中も俺は高石の事が気になって仕方なかった。

 なんで高石が俺と八島の部屋の事を知っているんだ?

 俺は高石に恐怖さえ感じていた。

 一体高石はどこまで知っているんだ?

 そして、高石はなんでその事を俺に言うんだ?

 もしかして俺を脅そうとしてるのか?


「何がしたいんだ・・・・・・」


「木川・・・・・・」


「ん? どうした八島?」


「・・・・・・木川こそ・・・・・・」


「俺? 俺は普通だぞ?」


「嘘・・・・・・」


「え・・・・・・」


「・・・・・・何かあった?」


 八島は心配そうに俺の顔を見ながらそう尋ねてくる。

 不安に思っている事が他の皆にバレないように普通を装っていたが・・・・・・なんでこいつはこう勘が良いんだ・・・・・・。


「なんでもねーよ、あの三人が暴走しないか心配なだけだ」


「・・・・・・ん・・・・・・なら良い・・・・・・」


 俺がそう言うと八島は宝を探すのに戻っていった。

 

「とは言ったが・・・・・・あとでもう一回高石と話す必要があるな・・・・・・」


 俺はそんな事を考えながら、とりあえず宝探しに集中することにした。

 俺たちはそれから快進撃を続け、次々と宝を見つけてポイントを稼いでいった。

 しかし、時間が経つにつれて宝も減少し、他の班同士との争いも激しくなっていった。


「おい! 木川の班だ!」


「何!? 本当だ! 良し! 木川を殺せ!!」


「誰かスコップ持ってこい! 生き埋めにするぞ!!」


「なんで狙いが俺だけなんだよ!!」


「まぁ、お前は朝の一件でクラス男共から狙われてるからな」


「なんでだよ!!」


「一人だけ女子と一緒に登校なんて、ラブコメチックなことしてるからだよ。よいしょっと」


「おい、なんでお前までスコップを取り出す?」


「え? あぁ、俺もお前を埋めようと思ってな・・・・・・てな訳で死ねぇぇぇぇ!!」


「お前もかよ!!」


 色々あったが、俺たち……もとい俺はなんとか生き埋めにされることなく、なんとか制限時間を迎えた。

 そして、俺たちはスタートした場所に戻り、今まさに一位になった班の発表をまっていた。

「結局私達ってどれくらいポイント稼いだのかしら?」


「えっと……700位じゃないか?」


「他の班がどれ位なのかが分かりませんからね」


 そんな話しをしていると学年主任の先生がマイクを使って話し始めた。


「えー皆お疲れ様!! それではいよいよ一位の班を発表するぞ!!」


「おっ! 来たぞ!!」


「やったわ! これで男子トイレで思う存分・・・・・・ぐふふ……」


「早乙女、何度も言うが絶対に叶えて貰えないぞ、その願い・・・・・・」


「これで、向井田君×木川君の絡みが見れるんですね!」


「その願いは俺が全力で拒否るわ!!」


 そんな話しをしているうちに、先生は三位の班から発表を始めていた。

 ちなみに、一位以外にも三位と二位には学食の食券が与えられるらしい。

 どっちかっていうと、俺はそっちの方が良いんだが・・・・・・。

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