第29話

「えっと……ここのはずなんだが……」


「何かあるかしら?」


 座標の示す場所には見た限り何も無かった。 山道の中の休憩スペースだろうか?

 そこだけ木は生えておらず、開けた場所になっていた。


「見たとこ何も無いが?」


「おかしいな? もう他の班に取られたとかか?」


 そんな話しをしていると、俺は木の上に箱のような物が乗っているのを見つける。


「……あれか?」


「なんで木の上に?」


 俺はと強は協力して木の上に上り、木の上に箱を下ろす。


「あったな……」


「と、とりあえず開けてみましょう!」


「そ、そうだな」


 疑問を抱きつつ、俺たちは箱を開けて中身を確認する。

 箱の中には一枚の紙が入っていた。


『問題を解き、宝のありかを見つけ出し、木の上からよくこの宝箱を発見した! しかし、人生はそんなに甘くはないぞ! 残念ながらこの箱の中に宝は無い! 君たちは完全に無駄な時間を過ごした! 残念!! こういう宝箱もあるので注意しなさい! PS:宝箱は元の位置にもどしてね』


 ぶちっ!

 何かがキレる音がした。

 ここまで苦労してこの仕打ち……。


「おい、なんでこんなムカつくんだ?」


「苦労したのが水の泡だからじゃない?」


「む……ここまでやったのに……」


「ま、まぁ……こ、こんな事もあるんじゃないかな……」


「なんですか? このBLだと思ったら少年漫画だったみたいな残念な感じ……」


 いや、普通に宝置いておけよ!

 なんでダミーが有るんだよ!

 てか、ここまで頑張って無駄足とかなんなんだよ!

 これただのレクリエーションだろうが!!


「何が残念だ! 人を小馬鹿にしやがって!! こうなったら意地でも宝を見つけ出してやる!!」


「とは言っても、お前は何も頑張ってないがな」


「それは置いておくとして!」


「置いちゃだめだろ」


 それから俺たちは皆で協力して再び宝を探し始めたのだが……。


「クソッ! また外れか!!」


 宝を見つけても中身は無く、最初と同じ内容の紙が入っているだけだった。


「また外れね」


 三個目の宝箱も外れに終わり、俺たちの班はイライラし始めていた。


「あぁぁぁ! あの学年主任何考えてやがんだ! 全部外れじゃねーかぁぁぁ!!」


「これだから男ってやーねー」


「早乙女、だからお前も男だ」


 昼も近づいてきており、俺たちは山の中の広場で食事の準備を始めていた。


「はぁ……いまだにポイントゼロか……」


「他の班だってゼロだろ? 一体どこに宝があるんだよ」


「まぁ、考えたって仕方ないし早くご飯食べましょ」


「あぁ、そうだな……」


 俺たち男は地面に座り、女子はベンチで食事を始めた。


「ん……木川……」


「ん? どうした八島?」


「………ご飯……」


「あぁ、そうだったな……ほら」


「ん……ありがとう」


 俺は八島に言われ、自分のバックの中から俺の分と八島の分の弁当を差し出す。


「「「「え?」」」」


「あ………」


「………」


 その瞬間、班員全員が俺と八島の方に注目した。

 考えて見ればそうだ。

 なんで俺のバックから八島の弁当が出てくる?

 そんな疑問をクラスメイトが持つのは当たり前だ。


「いや……こ、これは……」


 そして、このとき俺が変に言い訳じみた事をしようとした事が更に悪かったのかもしれない。


「あらぁ~やっぱり貴方たち……何か怪しいわねぇ~」


「おい! なんで琉唯の鞄から八島さんの弁当が出てくるんだよ!!」


「なんで女の子とそんな怪しい展開になっちゃうのよ! 木川君は男の子といけない関係にならなくちゃ! 私の原稿が!!」


「なんでそうなるんだよ!!」


 最後の一人を覗いて、早乙女と強の意見は正しい。

 朝の事を否定しておいて、これは無い……。

「いや、これはだな……あのあれだ! 弁当屋で買ったんだ!」


「いや、それいつものお前の弁当箱じゃん」


 そうだったぁぁぁぁぁぁぁ!!

 俺はバカか!!

 なんでこんなアホな嘘を付くんだよ!

 弁当箱なんて見れば分かるだろうが!!


「ま、まぁ……そんな事より弁当食おうぜ……は、腹減ったし……」


 俺はそう言って弁当箱の蓋を開ける。

 

「おい」


「あら……」


「ん?」


「琉唯……なんで中身は八島さんと一緒なんだ?」


 また、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 そうだ、今日の昼飯は昨日八島に頼まれて俺が自分と八島の二人分を作ったんだ!

 中身は同じだし、他人がそれを見て俺たちの関係を疑うのは当たり前だ!!


「た、たまたまじゃないか……」


「あら、たまたまなんて……まだ昼間よ?」


「お前のその解釈は間違ってる」


 なんかどんどん泥沼にハマっている気がする……。

 どうする?

 もう正直に話すか?

 しかし……絶対に面倒な事になるよな……特に強……こいつは俺を殺しかねない……。


「ねぇ、あんまり聞かない方が良いんじゃないかな? 木川君困ってるよ?」


 困っている俺を見てそう言ってくれたのは、高石さんだった。

 高石さんの言葉に強は戸惑っていた。

 そんな強に高石さんは続ける。


「ほら、二人とも困ってるし……あんまり詮索するのは悪いよ、何か理由があるのかもしれないし……」 

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