第28話
「変に誤解されてるみたいだけど、俺と八島はそんな関係じゃないよ」
「そうなんだ、女子が噂してたよ?」
「まぁ、そうだろうけど……」
「でもそっかぁ……付き合ってないんだ……」
そう言う高石の目はどこか嬉しそうだった。 高石は横川や八島と違って普通の女子のようだ。
よかった、うちの班にも常識人が居て……。 テントの設営が終わると、休憩を挟んで次は班ごとのレクリエーションが始まる。
「はーい、これから班ごとのレクリエーションを行っていただきまーす!」
御影先生が二年生全員に向けてレクリエーションの説明を始める。
レクリエーションの内容は簡単に言うと宝探しゲームだ。
配布された地図に点が記してあり、その点の場所に問題が設置されているらしい。
その問題を解くと宝のありかが分かるという仕組みだ。
ちなみに宝には得点があり、得点の多い班が優勝らしい。
「高校生にもなって宝探しかよ……」
「学校行事だからな」
「とりあえず、一番近いところ行ってみる?」
「そうですね、まずは近場から行ってみましょう」
「そうね、様子見も兼ねてね」
「ん……賛成……」
話しがまとまり、俺たちは早速一番近い点の場所に向かった。
すると、そこにはもう他の班が三組程やってきていた。
「みんな考えることは一緒か……」
「お、あれか? 問題って」
強の指さした方には立て看板のような物が設置されていた。
そこには張り紙がしてあり、そこに問題が書いてあった。
「いや……問題とは言われてたけど……」
「数学だな……」
「数学ですね……」
看板に書かれていた問題は思いっきり数学の問題だった。
だから皆ノートを取り出してたのか……。
「マジかよ……横川、お前数学の成績は?」
「………」
隣にいた横川に俺が質問すると、横川はそっと目を反らした。
「よし、分かった………誰か数学得意な奴いるか?」
「あ、私割と得意だよ」
そう言ったのは高石だった。
高石は問題をスマホのカメラで撮影すると、持ってきていたメモ帳に計算を始めた。
「なぁ……これホントに数学か? XとかYとか出てるぞ? 英語じゃないのか?」
「とりあえず、お前も数学が苦手な事は分かったよ」
尋ねてきた強に俺はそう言ってため息を吐く。
そう言えばこいつも数学ダメだったな。
しかし、この問題結構難しいな……別に俺も数学は得意では無いが、この問題が難しいと言うことだけは分かる。
高石はそんな問題をスラスラ解いていた。
頭が良いのだろうか?
「あ、解けたよ。34だけど……これが何か意味あるのかな?」
「確かにそうよねぇ~? その数字が何を示しているのか分からないと、お宝の場所までいけないわよん?」
「だよな……どういう意味なんだ?」
俺は地図を見ながら数字の意味を考える。 他の班の連中も同じところで躓いているらしく、頭を悩ませていた。
「ん……地図………」
「ん? なんだ地図がどうかしたか?」
「………縁………番号書いてある……」
「え? それがどうした?」
「………座標……」
「座標? ん~? あぁ!! なるほどな!!」
地図に振られた番号を答えの数字に当てはめて線で結ぶと丁度交わる場所があった。
恐らく宝はそこにあるのだろう。
「八島さん良く気がついたね」
「ん……まぁ……」
高石にそう言われ、八島は少し照れている様子だった。
なんだかんだで八島もクラスに馴染んできているようで安心した。
ん?
なんで俺が安心してるんだ?
そんな事を考えながら、俺たちは座標の場所に向かった。
「しっかし、良くこんな手の込んだレクリエーションを考えるよなぁ~」
「考えたのはどうせ学年主任の沼原先生よ、こう言うの好きそうだし」
「沼原先生、去年の学園祭も張り切ってたしね……」
学年主任の沼原は祭り好きで有名な先生だ。 だからなのだろうか?
俺たちの学年の行事は変わったものが多い。 もちろんこのレクリエーションもだ。
あの先生の事だから、こんな簡単に宝にたどりつける訳がない。
「んで……横川、お前はさっきから何をしてんだ?」
「え?」
俺は一番後ろを歩く横川にそう尋ねる。
横川は先程から俺と強が話しをしているの見て、何かをスマホにメモっていた。
まぁ、何となく察しは付くが……。
「だ、大丈夫! 出来たらちゃんと見せてあげるから!」
「見るか!! そう言うことじゃねぇ! 山道で歩きスマホなんて危険だろうが!」
「創作活動にはいつ神様が下りてくるか分からないんだよ!!」
「お前の場合は腐った神が下りてきそうだけどな……」
「えへへ~それほどでもぉ~」
「褒めてねぇ……」
まったく、こいつは全然ブレない。
俺に暴露して逆にオープンになった気がする。
「横川さん、木川君の言うとおりだよ。危ないから今はレクリエーションに集中しましょう」
「高石さんに言われたら……仕方ないですね……」
「おい、なんで俺だと言うことを聞かないんだ?」
一応俺、班長なんだが?
なんて事を考えていると、ようやく宝の有る座標にやってきた。
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