両親の行いが

私は続けます。


「PTA活動においても、委員を選出する際に母親が独自の理論を展開して委員に選ばれることを強引に回避し、それが他の保護者の不評を買い、保護者たちが子供の前で彼女の両親の愚痴をこぼしたことも彼女に対するイジメの原因の一つになったものと思われます。


彼女の両親の行いが彼女の振る舞いに影響を与え、他の保護者の反発を招き、その愚痴を耳にした児童が彼女を攻撃してイジメを行い、それによっていっそう彼女の言動も荒れる。まさに不幸の連鎖というものでしょう」


実の両親がそれぞれかつてストーカーじみた行為を行っていたことについては、さらに調査が必要と判断し、この時点では告げませんでした。虚偽を伝えてしまったとなるとやはり好ましくありませんし。


するとそこで一旦話は終わることになりました。昼食ができたからです。そしてそのまま昼食をいただき、千早とヒロ坊くんと私は、ヒロ坊くんの家へと帰りました。




「ただいま」


そう言えば、


「おかえり~♡」


と返ってくるのが当然の家。本当に些細なことですが、家族の関係が良好でない家庭ではこれができていないところもあると聞きます。崩壊してしまったカナの家もそうでしたし、フミの家ではまさに今現在そうです。


だからといって、無理に挨拶を行うようにすれば関係が良好になるかといえば、まったくそのような実感がありません。


順序が逆なのです。挨拶をするから関係が良好なのではなく、関係が良好だからこそお互いに声を掛けたくなるのです。自身の自宅では満足に挨拶もしなかったカナとフミがここでは自然と挨拶できることからもそれが分かります。


リビングに入ると、イチコとカナとフミが寛いでいます。


「おかえり」


「おかえり~」


「おかえり」


イチコとカナとフミが改めて迎えてくれました。だから千早とヒロ坊くんと私も、


「ただいま~♡」


「ただいま」


「ただいま戻りました」


と自然と応えられるのです。


そうして私達はそのままリビングで寛ぎました。


なお、実を言うとここも、私が初めて訪れた時には、とても他人を通せるような状態じゃありませんでした。


とても家族仲が良好な山仁家ではありましたが、こと<家事>という点では劣悪と言っても過言ではなく、いつも山下さんを迎えて<会合>を行っている二階の部屋以外はどこも似たような状態で、私達がこちらで過ごさせていただくようになってから、手分けして掃除などをするようになったのです。


私達としては、最初はお邪魔させていただいていることのお礼のようなものでしたが、今ではそれが当たり前になり、山仁家にとってもメリットになっていたのでした。


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