集合時間
ヒロ坊くんの家に上がらせていただいた時にはすでにお義父さんはお休みになった後で、リビングではイチコとカナが相変わらずだらしない恰好で寛ぎながらゲームをしていました。
「おはよ~」
声を揃えて私を迎えてくださる二人にも、私はやや呆れたように、
「女性としては有り得ませんね」
と返させていただきます。でも、
「いいじゃん、別に」
「女らしくないは、むしろ褒め言葉だぜ~♡」
などと、まるでこたえた様子がありません。そもそも私自身が、だらしない恰好について本気で批判してるわけではないのが伝わっているからでしょう。
彼女達にはそれが自然な姿なのです。家族しかいない場所では。
それでも、私が来たということで着替えます。私も家族に近い存在ではあるものの、自分達とは違う価値観を持っているということは理解してくださっていて、気遣ってくださっているんです。
これは、フミに対してもそうでした。
基本的には、<この家に住んでいる家族>の前でのみ見せる姿ということなのでしょうね。
それから十分ほどして、フミが訪れました。
「おはよ~♡」
集合時間にはまだ余裕はあったものの、自分の家にはいたくないということで、早く出てきたのでしょう。
ハイヤーの予約時間まで、ヒロ坊くんと、千早と、イチコと、カナと、フミと、私とでしばし歓談です。
するとヒロ坊くんが録画していたアニメを見始めました。『セレリオンの猫っ子たち』というタイトルのアニメでした。
それは、ある未開の惑星に不時着した『セレリオン』という宇宙船の中でたくましく生きる十五匹の猫達を描いたアニメなのだそうです。宇宙船の本来の主人である人間達は脱出したけれど、食料も酸素もギリギリの状態での脱出だったから猫達は連れていけなかったという、やや厳しい内容の。
ですが、そこに搭乗する猫達は大変に利口で活発でバイタリティに溢れていて、宇宙船に残された資材を活用して生活できるようにしたり、住むには適さないけれど一時間だけなら何とか外にも出られるその星の環境を活かして食料の調達に出たりと、困難な状況ながら強く生き延びている姿が描かれていました。
しかもその猫達は、人間が同時に画面に登場していない時には擬人化され、下は小学校の低学年くらいから上は中学生くらいの子供達なのです。
放送していたのは今年の春でしたが、ヒロ坊くんと千早がそのアニメがとても好きで、こうして何度も見ているのです。
おかげで私もほとんど内容を覚えてしまいました。
私自身はあまりアニメには関心がないのですが、そのアニメは、なるほど考えさせられる部分もあって、大人でも楽しめるようにできていると感じていたのでした。
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