努力についての対価

現在、私自身の年収は、一千万円を大きく上回っています。美容家電に用いられている特許料がそのほとんどを占めています。


私は、父が重役を勤める大手家電メーカーの下請けである、主に電子部品の開発を行っている企業と懇意にさせていただいていて、そこで様々なアイデアを形にしていただいているのです。


私自身は必ずしも機械に詳しいわけではないので。家電製品の配線や、パソコンのセッティングやOSのインストール、HDDの交換くらいまでなら自分でもできるのですが、そのくらいでは私のアイデアを自力で形にはできません。


その企業は、完全に独立した企業ではありつつも、大手家電メーカーの開発部門という側面も併せ持ち、大手メーカーが苦手とする多品種少量生産という形に特化したメーカーでした。


様々な企業の要望に応え、オーダーメイドという形で精密機器を作ったりもしています。母のエステティックサロンで使われている美容家電の一部も、私のアイデアを基にそのメーカーで作ってもらったものです。


この際、特許申請した技術は、海外でも用いられ、その使用料が私の下に入ってくるというわけですね。


ちなみに、初めて特許を申請したのは、小学五年生、ちょうど今の千早と同じ頃でした。


その際、両親がとても褒めてくれたのが嬉しくて、私はさらに自身の価値を高めようと躍起になったという経緯もあります。


今では恥ずかしい過去ですが。


そんな私の収入に比べれば、月千円のお小遣いなど、ティッシュ一枚分の価値もないかもしれません。しかし問題はそこではないのです。限りある自身の手札をいかに有効に活用するかということが重要なのです。


ないものをいくらねだったところで手に入りません。むしろそんなことをしていては時間を無駄に浪費するだけです。


また、もし、ねだったことで手に入ってしまっては、それ以降もそうやって安易に手に入れようとしてしまうというのが人間の性でもあるでしょう。ですがそれでは自身を高めることは難しいのではないでしょうか。


私が千早にお小遣いを渡しているのも、彼女の日々の努力についての対価というニュアンスも込めたものです。それがなければさすがに出していなかったでしょうね。


そして千早は僅か月千円のお小遣いでは到底釣り合わないくらいの努力をしています。それについてはいずれまた何らかの形で対価を支払いたいと思っています。現状では進学についての準備も、千早の実家ではなにも行われていないようですので、そちらを私が負担するということになりそうだと、現時点では考えていますが。


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