帰るべき家
夕方。たっぷりと楽しんだ私達は、バスに乗りヒロ坊くんの家へと帰りました。そろそろヒロ坊くん達も帰っている頃でしょう。
せっかくお風呂に入ったというのにまた汗をかいてしまいましたが、旅館のお風呂はあくまでリフレッシュの為のものでしたので、帰ってからまた綺麗にするためのお風呂というのもアリでしょうね。
などと考えつつ帰り着くと、やはりヒロ坊くん達は先に帰っていました。
玄関のチャイムを鳴らすと、
「おかえり!」
とヒロ坊くんが玄関を開けて迎えてくれました。
「ただいま」
もう当たり前になったその挨拶を返します。ここが私達にとっても<帰るべき家>となっているのですから。
ホッとするのです。本当の家に帰る以上に。
そしてそれがとても嬉しい。
するとそこに、山下さんと沙奈子さんがやってきました。沙奈子さんには一階でヒロ坊くんや千早と一緒に待っていただくとして、私達は二階へと上がります。
「今日はお世話になりました」
冒頭、お義父さんがそうおっしゃって、頭を下げてくださいました。私は恐縮して、
「いえ、私達は私達で楽しめましたから、すごく良かったです。千早も喜んでいました」
と応えさせていただきます。
さらに今度はイチコが、
「あ~、私も行きたかったな~」
と。
なので、申し上げさせていただきます。
「今ならまだ、次の土曜日の予約の人数を変更もできますよ」
「そうなんだ。じゃあお願いしよっかな」
イチコの言葉に、カナとフミも、
「じゃあ、私も」
「私も!」
と手を上げました。当然の流れでしょうね。ですがそこに、
『
玲那さんからのメッセージ。
「…あ!」
フミがハッとなって声を上げます。
そうです。お義父さんは仕事があるため行けません。つまり、男性はヒロ坊くんただ一人となってしまうのです。故に普通なら、彼はあのお風呂に一人で入ることになる。フミはそれに気付いてしまったのでしょう。
けれどそれに対してイチコは、平然と、
「別に、ヒロ坊はみんなと一緒のお風呂でも平気だよ。たぶん。私で見慣れてるはずだし」
などと返します。さらにはカナも、
「あ~、そうかもね。私も時々、ヒロ坊と一緒にお風呂入るけど、ぜんぜん平気そうだから。なんだったら私とイチコがヒロ坊と一緒に入ったらいいんだよ」
とまで。
正直、二人ならばそうおっしゃるのは十分に分かっていました。むしろそう言ってくれることを期待していた部分もあります。
けれど、実際にそうなってみると、私は全身の血液がカアッと熱を帯びて激しく奔るのを感じてしまったのでした。
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