姉弟のようなもの

日曜日。今日はヒロ坊くんと千早が楽しみにしている、学校でのお祭りの日。


どうやら天気の方は問題なさそうで、一安心でした。


お祭りの本番は夕方からなので、それまではいつものように過ごします。


山下さんの家に行き、料理をするのです。


今回のメニューはスパゲティカルボナーラ。もはやすっかり手慣れた様子で、早々に作ってしまいました。


それをみんなでいただいて、いったん、ヒロ坊くんの家に帰ります。


そして午後の勉強を済ませると、ヒロ坊くんと千早は、家の前でバドミントンで遊び始めました。


私は審判役ですね。


また、通りがかった人に迷惑にならないように見守る役目でもあるでしょう。


昔はこうして家の前で子供が遊んでいるのは当たり前の光景だったのでしょうが、近頃は何かと煩いようです。


しかし、大人がしっかりと見守るのは本来の姿でもあるでしょうから、今の時間は寝てらっしゃるお義父さんに代わり、私がその役目を果たします。


決してそうするように言われたからではありません。むしろ、『見守ること』は建前のようなものでしょうか。私はただ、ヒロ坊くんと千早の姿を見ていたいだけなのです。


小学校六年生ともなると、男子はあまり女子とは遊ばなくなるようですが、ヒロ坊くんはそういうことはあまり拘りません。


彼にとって千早はもう、姉弟のようなものというのもあるのでしょうね。


もっとも、たとえ姉弟であってもこんなに仲が良いというのは、珍しいのかもしれませんが。


でも、ヒロ坊くんは、実の姉弟であるイチコともとても仲がいいのです。


お互いにゲームが好きで、私や千早やフミが帰った後では、カナと合わせて三人でゲームをしたり動画を見たりアニメを見たりして過ごしているそうです。


そして、今ではさすがに別々ですが、イチコが中学に通っていた時まではお風呂も一緒に入っていたと聞きました。


しかも、一緒に入らなくなった理由は、『恥ずかしいから』や『嫌になったから』ではなく、イチコが成長したことで、


『一緒に入ると狭いから』


だったとのこと。


そうして、お互いをあるがままに認め合っていたからこそ、ヒロ坊くんはこんなに器の大きな人に育ったのでしょう。


私も、そんな風になれるでしょうか……?


彼と一緒にいるためには、彼に認められる人になるためには、私もそうならないといけないのだと感じます。


彼はそのままの私を認めてくれているのです。そんな彼に一方的に甘えているだけでは、<パートナー>にはなれません。


私も彼のそのままを認められるようにならなければ。


千早やカナやフミや沙奈子さんのことも受け止められる彼を。


そのために私は努力を続けるのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る