御友人

「メンドクサイことは抜きで、行くぞ~!」


カナが音頭をとり、イチコの誕生日パーティが始まります。


ただ、カナがすごく張り切っていて、誰の誕生日パーティか分からなくなっていましたが。


「私の誕生日パーティーなんだけどな~」


イチコがそう言うと、


「固いこと言いっこなし~!」


と、悪戯っぽく笑います。


そしてもう、カナもフミも千早も、弾けまくりの歌いまくりの踊りまくりで、もはや混乱状態でした。


でもそれは、いろいろストレスが溜まっていたものをここぞとばかりに発散しようとしてのことだとは分かりましたので、私も何も言いませんでした。イチコもヒロ坊くんも楽しんでくれています。


また、玲那さんも体を揺らしてリズムをとっていらっしゃいます。本当ならきっと歌いたかったのでしょう。でも、<声>を失ってしまった彼女にそれはもう叶えられることのない願いなのかもしれません。


……いえ、そうではないですね。ここで諦めてしまっては確かに叶わない願いですが、もし、何らかの方法で声を取り戻すことができれば、彼女も再びカラオケを歌うことができるようになる可能性はあるはずです。


私も、それに貢献することができれば……


せっかくのイチコの誕生日にそんなことばかりを考えている私は、きっと空気が読めない人間なのでしょうね。


ですが、これが嘘偽りのない私という人間なのです。そして、ヒロ坊くんをはじめとした皆が、そんな私を受け入れてくださいます。


だから私も、この繋がりを大切にしたいのです。


ここにいる一人一人を、もちろん家で休んでらっしゃるお義父さんも、私は大切にしたいのです。


私にとっても<もう一つの家族>なのですから。




たっぷり三時間楽しんで、カラオケボックスでの誕生日パーティはお開きとなりました。


「は~い、それではお時間になりました~。これから帰って、千早ちゃんのケーキを食べま~す」


カナがそう言って締め括り、ヒロ坊くんの家に帰る為にカラオケボックスを出ます。


すると、外には何人かの男女のグループが待機していました。玲那さんの御友人達です。彼女の<事件>のことを知りながらも、いえ、それを知っているからこそ彼女を守る為に集まったという方々でした。


イチコの誕生日パーティの為にこのカラオケボックスに玲那さんが来るので、彼女を励ます為に集まったそうです。


すると、沙奈子さんが、


「こんにちは」


と、挨拶しました。


それに対して、特に若い男性達は嬉しそうに笑顔になって、


「こんにちは!」


と返していました。実はその男性達は、山下さんと沙奈子さんが住んでらっしゃるアパートの住人でもあり、元はと言えば、沙奈子さんを陰から見守ると誓った方々とのことでした。


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