別荘の予定

こうして、八月一日火曜日に、ヒロ坊くん、千早、沙奈子さん、イチコ、カナ、フミ、山下さん、そして私の八人で海に行くことが本決まりとなりました。


ただし念の為、その週の平日すべてを予備日として、天候次第で多少前後することにはしましたが。


そしてさらに、


「もしよろしければ、絵里奈さんの休みに合わせて、八月十八日の金曜日の夜から八月二十日の日曜日にかけて、私の別荘に、山下さんご家族もご招待したいのですが、いかがでしょうか?」


とも、申し上げさせていただきます。


すると山下さんは少し慌てた感じで、


「え? もしかしてそれも、沙奈子が行きたいって言ってるんですか?」


と訊き返してこられましたので、私はすかさず答えさせていただいたのです。


「はい。もちろんそうです」


これも事実でした。決して積極的に自ら話をするタイプではない沙奈子さんがいかにヒロ坊くんや千早に心を許しているかという何よりの証拠でしょう。


さすがにここまで外堀を埋められては観念するしかなかったらしく、


「沙奈子が行きたいと言ってるなら……」


と覚悟を決めてくださいました。


ただ、


「そうなると、星谷さんのご両親にご挨拶しないといけないですね」


ともおっしゃられたので、私は、スマホで改めて予約状況の確認をしながら、


「別荘と言っても、あれは私達が商談や会合のために使うゲストハウスのようなものですから、予約さえ入れればそれで問題ありません。今ならその日は空いてます。と言いますか、その日しか空いてません。今すぐ返事をいただけると助かります」


やや強引ではありますが、このくらいでないときっと遠慮なさると考えましたので、ここは敢えて押させていただきます。


すると戸惑う山下さんに、ビデオ通話で参加されていた絵里奈さんが、


「いいじゃないですか、沙奈子ちゃんの夏休みの思い出になりますよ!」


と声が上がり、


加えて玲那さんからは、


『私も行きた~い。行きたい行きたい!!』


というテキストメッセージが届きました。


最初は『迷惑になるから』と辞退されていた二人も、折れてくれたのです。


その勢いに押されるかのように、山下さんも遂におっしゃってくださいました。


「は、はい、それではこちらこそよろしくお願いします。お世話になります」


正直、私はこの時、心の中でガッツポーズをとっていました。


実は沙奈子さん達を招待することは、ヒロ坊くんの望みでもあったのです。


「ピカちゃんの別荘に行くんなら、山下さんも一緒がいい!」


と。


ヒロ坊くんも、沙奈子さんをはじめとした山下さんご家族のことには心を痛めていて、少しでも癒せればと考えてくれていたのでした。


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