27,サボ
「ふひ~」
ため息ひとつ、午前11時。昨夜は
目の前には幅10メートルほどのアスファルトの通路。雨が降っていて悴む手を温める缶。壁を隔てて背後には検査中でジャッキアップされた一般型電車の
おっ、あと一粒、落ちてこい、ヨシ、落ちてきた。
最近の缶コーンスープ、粒が落ちやすくなった気がする。子どものころのは家に持ち帰って缶切りで開けて食べていた。
さて、適度にサボったのでそろそろ戻りますか。効率を上げるためのサボり。私の
気重にとぼとぼ事務所へ向かっていると、指定通路上で上司の
「おいっ、テメェッ、いい加減カネ返せや。あ? 膨らませようと思って競馬やって溶かした? んなこた聞いてねえんだよ、こっちは夜遅くまで仕事して真っ当に稼いでるんだ。何!? 今度こそ最後!? 聞き飽きたんだよその台詞はよお!! なんでもいいからカネ集めろやコラ!!」
どうやら金銭トラブルのよう。森本は上機嫌だったり不機嫌だったり感情が忙しい人。いまはチンピラのように怒り狂っている。業務中の私用電話等、勤務態度不良として評定は良くないとのこと。
わたしのような内気な者が視界に入ると襟を掴まれる恐れがあるので遠回りして事務所に戻った。森本は30分後に「まったくなんだあのクソ」などと言いながらしかめっ面で戻ってきた。
そして昼休み後、事務所から廊下に出たところで、わたしは森本に捕まった。
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