17,夢叶の鉄道知識
『東京、とうきょう、本日も、ご利用いただきまして、ありがとうございました。お忘れものないよう、ご注意ください』
東京駅8番線に到着した特急湘南。ドアが開くとホーム上に女声アナウンスがこだました。茅ケ崎駅含む首都圏や
ラッシュが落ち着いた東京駅。到着列車が特急ということもあり、ホームは他所見をしなければ人と人がぶつかるほどは混雑していない。同じホームの向かい側、7番線には北へ向かう列車を待つ列が形成されている。
更に先の
階段を下ってコンコースに出た。大きく回れ左して人混みを抜けた先に新幹線の改札口。
「ゆめかー!」
わたしの存在に気付いた美奈ちゃんと舞ちゃんが10メートルくらい先の支柱の前でにこにこしながら手を振っている。
「おはよう」
「おっはよー夢叶」
「夢叶ちゃんおはよう」
「おはようございます。不束者のわたしをよろしくお願いいたします」
「あー、アタシも不束者だから。しっかりしてるの舞だけだね」
「これから乗るの、東海道新幹線だっけ?」
「おお? 舞だけ福岡でも行く?」
「福違いだね、大丈夫、やまびこ号は東北新幹線だもんね」
そんなふたりのノリツッコミを経て、わたしたちは新幹線の改札機にICカードをタッチ、エスカレーターでホームへ上がった。21番線に停車中、ときわグリーンに塗装された車体が輝く東北新幹線の車両。騒音を極力抑えて高速走行するため先頭車両の約半分を占める長いノーズが特徴的。最高営業速度は国内最速の時速320キロ。
乗車前に新幹線の先頭前、ホーム柵からはみ出さないよう注意して三人揃って美奈ちゃんのスマホで記念撮影。線路側から美奈ちゃん、わたし、舞ちゃん。撮った写真はさっそくグループラインで共有された。
新幹線といえば、自由席派と指定席派が対立し、自由席派が指定席派を押し切る場面が団体旅行ではしばしば見られるが、わたしたちは三人とも基本的に指定席派。ただし自由席のほうが空いている列車の場合はこの限りでない。
車内販売がない列車のため、わたしたちはホーム上のコンビニで飲食物を買い、指定された前から4両目の7号車に乗車、進行方向右側の3列席に着席。各々貴重品は身に付け、自席と前後の席とのテリトリーに配慮しつつその他の荷物を棚に上げた。
平日のため乗客はやや少ない。わたしたちの前後に客はいないが、この先の上野か大宮でたくさんの人が乗ってくると思われる。
暖色照明とグレーのリクライニングシート。派手な外装に対して内装は落ち着いた雰囲気。わたしは窓側、舞ちゃんは中央、美奈ちゃんは通路側。
日本総合鉄道ではA席をアメリカ、B席をボストン、C席をチャイナ、D席をデンマーク、E席をイングランドと呼ぶ。指令員や乗務員、駅係員の聞き間違いを防止するためだ。例えば『エー』と『デー』、『ビー』と『シー』と『ディー』など。
鉄道マニアではないわたしの、入社後知ったいくらかある鉄道知識でした。
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