第6話

 その時、マンションの玄関口から四十歳くらいの男性が出てきて彼女に呼びかけた。


「な、七瀬さん❗❗ どうしましたか❗」


「あ…… 管理人さん❗❗」

 七瀬は会釈して、かすかに頭を下げた。

 どうやらマンションの管理人らしい。小太りの眼鏡をかけた中年男性だ。


「この方々と何か、ありましたか❓」

 小走りで駆けつけた管理人は七瀬の隣りに立ち、クリスと俺を睨んだ。

 少し動いただけなのに、もう額に汗が滲んでいた。


「い、いえ、ちょっと……」

 すぐに七瀬は首を振った。


「あなたは、ここの管理人さんかしら❓」

 クリスは、マンションを見回して訊いた。


「ええ、そうです……」

 管理人は、ポケットから出したハンカチで額の汗を拭った。


「私は警察のモノです」

 またクリスは手帳を示した。


「え、刑事さんなんですか……」

 管理人は怪訝な表情でクリスに視線を向けた。

 ミニスカートから伸びるむき出しの太腿を舐めるように見つめた。


「僕は、弁護士のシンゴです」

「え…… 弁護士❓」

 肩をすくめて、とても信じられないと言う顔だ。


「ええ、ビジュアル系弁護士です」

 俺は馴れているので笑顔で応えた。


「な、ビジュアル系……」たいてい驚くので馴れたモノだ。


「下着泥棒の事で七瀬さんに、お話しをうかがおうと思って……」


「ン…、下着泥棒ですか……」管理人も声をひそめた。


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