ロスト・ダンジョン

蓬莱汐

prologue

 古の時代。神話で語られる生物たちが種族の存亡を賭けて争った時代。

 

 ある種族は膨大な魔力を求めて。

 ある種族は強靭な肉体を求めて。

 ある種族は不治の病を癒す力を求めて。

 ある種族は永劫の生を求めて。


 全ての種族がダンジョンに潜った。


 その際奥に眠ると言われる秘宝––––"望の剣"を求めて。


 争いは一進一退の攻防を繰り続け、約5000年の間終わることはなかった。


 ある時、ある種族が一歩前へ出た。

 他の種族を押し退け、あともう一歩、あと少し手を伸ばせば届いたかもしれない距離まで辿り着いた。

 

 だが、その手が秘宝に触れることはなかった。


 人族の中で突如として現れた異端児、後に"神童"・"救済者"として語り継がれる少年が、その手を相討ちに退けたのだ。


 ある種族が秘宝に最も近付いたこともあり、諦めていた他の種族は秘宝の存在を次第に忘れていき、今では遠い過去の話から伝説の一端になった。


 世界中に存在する星の数の冒険者たちは皆、この伝説を聞いて育ってきた。

 

 失われた秘宝が眠るダンジョン––––"ロスト・ダンジョン"


 そのダンジョンが再び目を覚ましたのは、今から100年前の事だ。


 

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