からからかけるからカケラ

山本冬生

第1話 甘い苦いもの

「作るのも食べるのも好きなのはラングドシャ。甘くて平べったいクッキー。ネコの舌」

「作るのも食べるのも、そこそこ好きなのはチョコタルト。あまーいクッキー生地ににがーいチョコをたっぷりと」

 カヨカとトロン。このふたりが好む味はまるで違う。けれど弟のトロンは姉であるカヨカと同じものを求めたがる。マグカップ等もお揃いの物を使うため、よく甘いココアと苦いココアがごっちゃになる。その度に、カヨカがトロンを注意するが聞く耳持たない。仕方がないとカヨカが提案したのが……。

「70%これ以上は苦すぎてムリ」

「70%これ以上は甘すぎてヤダ」

 互いが好む味に調節したチョコレートを溶かす。これでトロンも妥協した。

 その日からカヨカはずっと、傘の形をした甘苦チョコレートを持ち歩いている。

「弟にあげるように、いつも持ってるの」

 しかし、たまに自分で食べてしまうこともあるおねーちゃんであった。

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