第3話 既に3話目にして、早くも世の中の摂理を痛感する!

「そもそもアンタは何者なんだよ? そこの山賊の話じゃ、真っ当な人間じゃねぇだろ?」


 俺はチラリッと地面とお友達になっている山賊達に目をやると、目の前の少女に対してそう言い放った。


 実際にレストランを乗っ取るなんて尋常な手段ではない。カネにモノを言わせて買収したのか、はたまた武力で脅し強引に奪ったのか……先程の山賊達のやり取りを見るに後者だとは思うのだが。



「あらあら~、背景モブの分際で意外と鋭いのですね。ワタシが人間じゃない・・・・・・……ですか。ふふふふふっ……」

「この状況を見ても、違うって言うのかよっ!!」


 少女は俺を褒めつつも、馬鹿にするような気味の悪い笑いをしている。俺は両腕を広げ、口から赤いものを出したり入れたりして、楽しそうに地面でのた打ち回ってる山賊達を使い、自分の言葉を肯定する行動表現パフォーマンスをした。


「ふふふっ。アナタは何か誤解しているようですね」

「誤解……だと?」


 俺はその言葉を聞いて、訝しげに眉をひそめてしまう。


「ええ、そうです。まずこのレストランについてですが、元々ここは『空き』……いえ、正しくはお店ですので『空き店舗』でしたよ。それもず~っと・・・・、ね」

「はぁ~っ?」


 少女の言葉を聞いて、俺は更に険しい顔をしてしまう。何故なら、その話には矛盾があったからだ。


「おや、何か疑問でもあるのですか?」


 俺の疑わしい表情を読み取ったのか、少女は軽い感じでそう聞いてきた。


「いや、疑問も何も……その話、完全に嘘だろ? だってよ、俺は昨日この店で食事したんだぜ。それも朝と夜にな。それが何で『ずっと空き店舗』なんだよ? はん! そんな与太話、誰が信じられるかってんだよ」 


 俺はあまりにも荒唐無稽な少女の言い訳に、厭きれ返ってしまう。


「…………」

「ほぉ~ら、やっぱりな! 図星突かれたんで、反論できやしないだろ?」


 肯定なのか、少女は無言のまま何も反論して来ない。俺はそっぽを向き、追い討ちをかけるように嫌味の言葉を口にしてしまう。


「…………アナタは……何故それ・・を覚えているのですか?」

「へっ? はっ? 何の話だよ???」


 先程の明るい口調とは打って変わったようなとても深刻な面持ちで、少女はそう訪ねてきた。だが俺はというと、言ってる意味が分からずに、ただただ聞き返すことしかできない。


「お、おい!」

「…………」


 俺はさっきの言葉がどういう意味かを聞くため、声をかけるのだったが、少女はまた何かを考えるように顎に手を当て、俺の言葉は無視されてしまうのだった。


「あっ……すみません。最近温かくなってきたので、少し転寝うたたねしていました」

「って、寝てたのかよっ!?」


 どうやら俺のことを無視してたのではなく、春の陽気に誘われて転寝を……いやいや、立ったままなんだから、仮に寝ていたとしても、それは『転寝』の分類適合化カテゴライズに当てはまらねぇだろうが!!  って、どっちにしても俺は無視されてるじゃねぇかよ!?


「あの……あんまりアナタの心理描写多くして、文字数無駄に消費しないでもらえますかね? ぶっちゃけ感想欄に『なんか背景モブが本文荒らしてるわ!!』などと、書きこんでもよろしいのですかね? ワタシが一声かけ、読者を無駄にあおれば、このような物語なんぞ、容易に連載中止にまで追い込む事も簡単にできるのですよ!」

「さっきアンタが文字数稼げって言ったんじゃんかよ!! ってか物語のキャラ自ら、自分の存在意義をおびやかそうとしてんじゃねぇよ!? はぁはぁ、はぁはぁ」


 俺は少女のあまりあるボケに対して、全身全霊でツッコミをしたため、息を切らせてしまう。またそれと同時に大声を張り上げたせいで、すっごく喉が痛くなっていた。


「んんーっ。声出したせいか、喉が痛いわ……」

「大丈夫ですか? もしアレならこれをどうぞ……」

「あ、ああ……ありがとうございます!」


 少女はおずおずっといった感じで俺を気遣うように、左手で持っていたモノを差し出してくれた。俺は差し出されたそれを学校で賞状を受け取るが如く、一歩前に出て両手を突き出し丁寧に受け取り、感謝を示すため頭を下げた。


「(ほんと困った時には、人の優しさが身に沁みるよね~)……ってコレ、さっきの恐怖ナポリタンじゃねぇかよ!? 喉渇いてんのにこんなの食べたら、詰まらせて死んじまうだろうがっ!!」

「……ちっ」


 少女は「途中まで小芝居が上手く行ってたのになぁ~、何でコイツ途中で気付きやがったんだろう?」などと言いたげに、残念そうに舌打ちをしていた。


「油断も隙もあったもんじゃねぇな!! 何でそんなる気満々なんだよ!」

「あの~、そろそろ真面目に話を進めさせてもらってもいいですかね? この物語のジャンルって、ぶっちゃけ『ファンタジー』なんですよ。ですからあまり『コメディー』寄りですと、読者の方から通報されてしまいますので……その……すみません」


 俺の苦言を消失レジストさせたいのか、少女はやや真剣な面持ちでそんなことを言ってきた。本来ならば、そのような事案は無視して抗議を続けるのだが、当の俺の行動はというと、


「…………ごめんなさい」


 両手にナポリタンを持ったまま、少女に対して再度頭を下げ謝罪することしかできなかった。きっと世の中の摂理がそうさせたのかもしれない。



 目の前の少女と、持っているナポリタンに対して頭を下げつつ、第4話につづく

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