幕間
ある雑誌の記事
〈とある地方都市で、こんな噂がささやかれていた。
突然、自分の目の前に自分そっくりな人間が現れる。
いわゆる『影』と呼ばれるこのそっくりさんは、自分のオリジナルである人間を、甘い言葉で誘惑する。
「あなたの代わりに、あなたがやりたくないことをやりますよ。」
時には間接的に、時には直接的に近づいて。
そうして、いつの間にか宿主の首を絞めている。
あなたの居場所は『影』に乗っ取られ、当のあなたは強制的に誰かの『影』になってしまう。
どんなに胡散臭いと感じても。あなたはこう言うことになるのだ。
「あなたの代わりに、あなたがやりたくないことをやりますよ」、と――。
こんなのただの都市伝説。そんなふうに思う人もいるかもしれない。しかし実際この噂が広まった町ではおおよそ十数年にわたってささやかれ続け、実際に性格ががらりと変わってしまった人の報告例が相次いでいる。
極めつけは先日の集団記憶喪失事件。
市内のあちこちで、意識が混濁したまま街を徘徊する人々が現れ、保護された誰もが『影』の話と支離滅裂な体験談を語ったという。
しかしながら、この怪現象を解決することも、全容を明らかにすることももうできないだろう。
患者はみな神経衰弱で入院している。彼らの話はただの妄想として、時間と共に忘れ去られていくだろう。
筆者は予感している。これ以降『影』の噂がささやかれることはないだろうと。なぜなら、もう、事態は誰かの手によって解決されているのだから。〉
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