第05話【こども発掘調査】
「だんちょー、これなにー?」
鹿獣人の女の子が持ってきたかけらを”神像の右眼”で鑑定する。
「これは”氷のナイフ”のかけらだね。ジャンヌ達が集めているからもっていってね」
「はーい。わたしも模様合わせしていいー?」
「いいよー」
子供達の待つ居住区まで戻った僕らは、掘り進めた地下の土を少しずつ出しながら子供達と”発掘調査”にいそしんでいる。
もちろん遊んでいる、だけではない。
例えばジャンヌがしているのは刃物の復元作業だ。
折れた刃物の模様がわかればリュオネやクローリスが再現できるかもしれない。
「団長、これもらっていい?」
熊獣人の男の子が持ってきたのは……なんだこれ?
…………
・石木層の石塊(香木化石入り)
…………
「なんでこれが気に入ったの?」
「なんか良い匂いがするから」
わたしながらたずねると、男の子は嬉しそうに石を鼻に近づけた。
僕には全然わからなかった。
これも才能か。
こうして子供達とコミュニケーションをとっていると、壁の向こうからひょいとバイオレットの髪をまとめたオルミナさんがでてきた。
「あ、みつけた。ここにいたのね。……それにしても何ここ、養児院?」
オルミナさんの目の前には、土にまみれた子供達の面倒をみる大人達。
なるほど、たしかにそうだ。
「はやかったですねオルミナさん。向こうで休んでもよかったのに」
「そうしても良かったんだけど、ショーンがすねるから」
どうせなら一緒に温泉に入りたい、とのことだ。
ショーンは僕と一緒にさんざん休暇を取ったので、クローリスを送り届ける今回のオルミナさんの仕事には同行できなかった。
デニスと描いていた地図の清書、それに竜使い達の受け入れ準備を任されていて休むどころではない。
「それで? なにやってるの?」
「えっとねぇ、いせきちょーさ!」
僕が答えるより早く、隣にいた泥だらけのアメリが元気よく答えた。
「ほら、幹部会議でコリーがいってたやつですよ」
地下祭壇の事を話すとオルミナさんは目を見開きまわりの土を見渡した。
土からは様々なものが顔をのぞかせている。
「祭壇のまわりの土がこれ? まるでゴミ捨て場じゃない!」
ああ、なるほどそういう見方もあるのか。
「アルバ文明の人にはそうだったのかもねぇ。でも、私達にとっては宝の山よぉ」
通りがかったエヴァがアクセサリーの入った箱を開いてみせた。
「え!? そんなものが入ってたの?」
「まさに玉石混交で、僕もなんで祭壇のまわりにこれらがあったのか分からないんですよ」
箱をうけとった代わりにエヴァに袋を渡してから、目の前の地面に出土品を出していく。
「わー、だんちょーてじなじょうずー!」
隣のアメリが拍手をしてくれる。
アメリは褒める才能があるなぁ。
「ジオードをつかった彫刻、陶磁器……これは魔鉱をつかった属性付与のアクセサリー?」
「もちろんあそこにまとめられているようにごみもありますけど」
指さす先ではハンナが子供に気をつけながら馬車の破片らしい廃材をまとめている。
「でも宝の山っていうのは言い過ぎじゃない?」
そういったオルミナさんだったけど、次に僕がいくつもだした石塊をみてかたまった。
「これって、魔鉱の原石じゃない! 含有率も高い原石がディルム単位の大きさであるなんて!」
灼炎石を含んだ練重層の石塊をもちあげたオルミナさんの顔が赤くてらされる。
「練重、光帯、石木、流積、蔵玉……と、主要五種がゴロゴロありました。今、衛士隊の人達にウィールドさんの工房に運び込んでもらってます。ウィールドさんに精錬してもらえば正確な含有率もわかりますから」
「……まあ、私達にとっては宝の山か。古代アルバ人に感謝よね。おかげで魔弾を大量につくれるんだから」
深く考えるのをやめたのか、オルミナさんが石塊を手の平でもてあそびはじめる。
「あの子達にとっても、ですよ」
「ふふっ、なるほど、たしかに」
僕の視線を追ったオルミナさんが微笑ましい光景に笑みをこぼした。
向こうではリュオネとエヴァのまわりに女の子達が集まっている。
僕が危険じゃないと鑑定したアクセサリーをうやうやしくリュオネから受け取る女の子達の様子に、僕もあらためてほほをゆるめた。
――◆ 後書き ◆――
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
前回重要イベントがあったので、今回は場面転換の挿話的な感じになりました。
ちょっとナゴナゴしていただければ幸いです。
ザートがロリに目覚めたわけでは無いことはあらかじめお伝えしておきます。
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