第41話【クランの組織体制】


 リュオネ、クローリスなど見知った幹部は既に席に着いていて、自己紹介をした幹部も順に席についていく。

 今この部屋に居るのはこんな感じだ。


【団長】

ザート

【副団長】

リュオネ・ミツハ=アシハラ

【参謀】

スズ=カミジ

【技師長(外交担当兼任)】

クローリス

【顧問】

エンツォ

フィオ

【兵種長】

ジャンヌ=ヴィレット(元第二小隊隊長・軽装弓兵)

オットー=グラーツ(元第三小隊隊長・重戦士)

バスコ=アズナール(元第四小隊隊長・魔法戦士)

コリー=バーノン(元第五小隊隊長・整備工兵)

エヴァ=エッジワース(元第六小隊隊長・猟兵)

ポール=クロベ(元第七小隊隊長・伝令斥候)


【竜騎兵長】

オルミナ


「……改めて見ると、多いな」


 円卓は八人が座れる内側の円と十六人がすわれる外側の円でできている。

 その円卓には現在十二名が座っている。スズさんを入れれば十三名だ。


「四百名を抱える大所帯だし、このクランの特殊性を考えれば妥当だろう」


 エンツォさんがそういうならそうなのか。

【サバイバー】はもっと多かったらしいし、やっぱりこれくらいは必要か。


「今回二名が欠席していますので、幹部会を構成するのは十五名です」


 スズさんの説明を聞くと、クローリスが首をかしげた。


「今いないのはイネスさん……でしたっけ? 後の一人は遅刻ですか?」


「えー? ハンナは降格じゃないのぉ? あれだけの事ををしでかしたのにぃ」


「おい、会議なのだからほおづえをつくんじゃない」


 さっそく会議室がざわめく。やっぱりこの場にいない同僚が気になるようだ。

 エヴァの口振りからすると、ハンナの件は僕がいない間に広まっていたらしい。


「静かに。ハンナの処分について気になるでしょうけれど、遅刻している者を待つのも無駄です。では、クラン【白狼の聖域】の初めての幹部会議をはじめます。団長、あいさつをお願いします」


 スズさんが場を静めた所で、こちらに視線を向けてくる。


「では、改めて、銀級五位冒険者のザートです。隣にいるリュオネとともに、クラン【白狼の聖域】を立ち上げました。団長として、皆の参加を心強く思っています。ここにクラン【白狼の聖域】設立前幹部会議の開催を宣言します」


 皆の拍手に頭を下げてスズさんにうなづくと、スズさんが引き続き進行をしていく。


「それでは、クラン設立に際して必要な宣言を……」


 この後、設立に必要な書類のために皆でいくつかの宣言・同意をした。

 どれもすでに合意が取れている内容なので、儀式のように流れ作業として進める。



「それじゃ、ここからは砕けた感じでいこう。まずはクランの組織体制について議論したい」


 独立戦争が始まれば、ブラディアに残った冒険者は六爵の領軍のいずれかに組み込まれる。

 けれど、彼らはどれだけ人数が多く単体の能力が高くても、遊撃しかできない。

 それは既存のパーティの枠を崩せないからだ。


 その点、皇国軍を母体とする【白狼の聖域】は違う。

 平時は第一(重装騎兵)と第五(整備工兵)と第七と第八(諜報)以外の四兵種でパーティを組み冒険者活動をする。

 けれど、近くおこるブラディア独立戦争になれば、戦時体制として元の小隊編成にもどり、大隊単位の軍事行動をとる事ができるのだ。

 この体制に一般の冒険者パーティも組み込めるかをいま議論している。


「組み込むべきだろう。今後一般の冒険者パーティのクランへの加入が予想される。彼らを各兵種に組み込めば、我々は二個大隊を運用できる事になる」


「でもさー、戦闘能力はともかく小隊単位の訓練は必要じゃん? たるくね? まあおれら工兵には関係ないけどさぁ」


「ものぐさな事をいうんじゃねぇよ。二個大隊に膨れ上がるなら丁度良い。週一回でも全兵種合同の対抗戦ができるだろ。攻城戦ではお前等工兵が重要になるんだから当然参加しろよ」


「げぇ」


 うーん、確かにすべてのクランメンバーを再編できれば二個大隊に出来そうなんだよなぁ。

 ん? でも”銃”を使う戦争でクローリスが何かいってたな。


「ちょっといいか? クローリス、異世界での”銃”をつかった戦争というのはどういうものなんだ?」


 クローリスに話を振ると、ビクッとした後わたわたしはじめた。お前ぜったい油断してただろ?

 突っ込もうとしたらすかさずゾフィーさんが耳打ちをした。できる人だ……


「ええと、たしか密集していると”砲”をたくさん打ち込まれてしまうので散開したはずです」


「それは我々重戦士が密集してつくる障壁をもってしても防げないのか?」


「えっと……はい。銃は射程が長くて、体内魔力の消費も少なくて済みます。こちらが近づく前に連射されて障壁を崩されてしまう可能性が高いです」


 クローリスがオットーの質問に答える。

 ビクビクしながら答えたけど、内容は衝撃的なものだった。

 これまで各兵種に適切な銃を与えればいいと安易に考えていたけど、それじゃ全然だめだ。


(ザート、この議題は持ち越しにしよう。ここで話し合って結論は出せないよ)


 リュオネの言うとおりだ。ここで変な結論は出せない。


「わかった。銃は元々バルド教の僧兵が持っていた疑似法具レプリカだ。王国勢が大量にもっていてもおかしくない。戦争のやり方が変わるほど重要な問題だ。この件は後日、なるべく早くに再度話し合おう」


 話し合う前にそろえなきゃいけない資料がいくつもある。

 休暇から帰って早々、忙しくなりそうだ。






    ――◆ 後書き ◆――


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