第02話【各国の外交】


「ホウライ皇国との軍事同盟締結の任をブラディア王より受けて、我々は皇国に向かいます」


 静かに緊迫した雰囲気が会議室を満たしていった。

 アルドヴィン王国はバーゼル帝国と戦争する下準備としてブラディア侵攻を計画している。

 確かにブラディア国に皇国の艦隊が協力すればペリエールにいる王国艦隊に対抗できる。


 でも王国と帝国が戦争をすれば皇国は背後を突き、漁夫の利を得られるはずだ。

 本来帝国と王国との戦いは皇国にとって有利のはず……


 飲み物を口にし、考えを巡らせるうちに、単純な事に気づいた。

 戦いたがっているのは王国であって帝国じゃない。


 今回の内乱に帝国が介入するメリットはあまりない。 

 確かにアルドヴィンとブラディアが内乱を起こせば帝国はすぐにブラディアの背後を突く事ができる。

 でもそこまでだ。アルドヴィン全土は手に入らない。


 そればかりか、逆に皇国に背後を突かれ、ティルク征服どころか東方の領土を大きく損ないかねない。

 だとすれば帝国にとって次善の策は——


「なるほど、王国は帝国と手を結んだのですね」


 しばらく目を閉じていたリオンは深く長くため息をついた。

 帝国にとって次善の策は、王国がブラディアと内乱を起こしている間に皇国を先につぶす、だ。


「はい。王国は帝国と不可侵協定を結んだとブラディア王がアルドヴィンに放った密偵より報せがありました。帝国担当の密偵にも皇国への侵攻準備について探るよう指示をだしております。向こうに着く頃には陸路より報せが届く手はずになっております」


 王国と帝国が不可侵協定を結んだのなら、皇国は帝国に攻め込まれる。


「我々が”リュオネ殿下に”お話できるのはここまでです」


 子爵は軽く頭を下げ、話を締めくくった。

 これ以上は皇国のしかるべき所で話す内容なんだろう。


「お話いただきありがとうございました。ウルヴァストン子爵」


 リュオネも軽くうなずき話が一段落した。

 テーブルの上のカップが時折音を立てる時間が過ぎる。


 クランにも関係する話だからと僕もこの場に呼ばれた。

 おそらく協力を求められ、内容はリュオネの立場が絡んだものだ。

 身分はリュオネが上でも、クランのリーダーは僕なので呼ばれたという所だろう。


「ザート様」


 来た。

 大使を見据えて返事をしたけど、次にきた大使の願いは予想外すぎた。


「皇国駐留軍は解散します。ブラディア王の計らいで大隊の皆は冒険者になりますので、彼らをクランに組み入れていただけないでしょうか」




    ――◆ ◇ ◆――


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