第10話【パーティの意識共有は大事】



 あの後ギルドにもどり、頭数や調査結果を提出すると、結局ソフトシェルロブスターの報酬は五万ディナになった。

 

 新たに同じ宿に泊まることになったクローリスを加え、三人で宿に向かう道を歩いている。

 早めに帰る事ができて気分がいい、と言いたいところだけど、ブツブツと隣からなにやら聞こえてくる。


「魔法一発で五万ディナ……魔法一発で五万ディナ……」


 たしかに弱い魔獣に範囲攻撃をしたから大多数を倒せたけど、簡単なのは魔法のせいじゃないんだよ。


「クローリス、リオンがソードロブスターを先に倒していたのは何でだと思う?」


 急に話を振られて驚いたのか、クローリスが目を白黒させる。


「強い敵だから……ですか?」


「ソードロブスターはやっかいな敵なんだ。硬い殻で体当たりして、よろめいた瞬間に剣状の頭を振り回してくる。けれど、狭い場所ならそういう攻撃方法ができない」


「あっ、リオンはソフトシェルロブスターを障害物にしてたんですね!」


「そう。もし順番を逆にすれば、ソフトシェルロブスターを倒した後、高速で動き回る八体のソードロブスターを相手にしなきゃいけなくなっていた。僕らは安全に、楽に魔獣を倒すようにしている。だから戦術は大事なんだ」


 僕とリオンはあまり打ち合わせをしてこなかったけど、クローリスもこれから戦闘に参加するんだから、事前にしっかりする必要があるな。


   ――◆◇◆――


「それじゃ、今日は銅級冒険者としてふさわしい装備をととのえに行こう!」


「「おー!」」


 今日は快晴、カラリとした暑さの中、グランベイ北部、要塞の麓にある工房街に向かっている。

 こういう買い物イベントはみんなで行った方が良いよね。

 絆が深まるのもあるけど、みんなで吟味すれば衝動買いなどを防げるからね。


「ねぇザート、買う物の順番ってどうなってるんだっけ?」


 歩きながらリオンが予定をきいてきた。

 クローリス加入のせいで後回しになっていた武器の新調を楽しみにしているから、まちきれないんだろうな。


「まずは宿で世話になっているヨハネス商会に紹介された、フルト甲冑工房で防具の追加・新調をするよ。調整があるから早めに行っておいた方が良いからね」


 僕とリオンは領都である程度整えているけれど、夏の沿海部が予想以上に暑いし、もう少し弱点を補強する必要がある。


「私の装備を全額パーティの資金でそろえてもらっていいんですよね? いまさら分割払いとか言ってもききませんよ?」


「いわないって。途中加入でも装備品はパーティの資金からだすよ」


 クローリスは一から装備を調える必要があるけれど、命には代えられない。昨日の動きから、僕とリオンほど近接戦闘は得意じゃないから、弓兵の装備をベースにすることになりそうだ。


「それがおわったら、ウーツ工房で武器を見る。具体的にはリオン用の粗製のロングソードと、クローリスの銃剣の部品にする粗製のホウライ刀を手に入れる」


 銃の情報はまだ秘密にしておいた方が良いから、刀の銃剣への加工は鍛冶屋には頼まず、素人仕事だけど僕がやることにした。


「最後にフルト甲冑工房に戻って装備を受け取ったら一旦解散しよう」


 いくらパーティでも四六時中一緒にいたら疲れるし、プライベートも大事にしたいからね。



    ――◆ 後書き ◆――


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