第06話【対等な立場でパーティに】


「その前にこちらからもいいですか? さっき私のタブレットPCを『鑑定』しましたよね? しかもスキル以外の方法で」


 クローリスは不敵に笑っている。

 どういうつもりだろう?


「確かに、鑑定はした。そのタブレットの詳細に”異世界製”ってあったから君が異世界人だと信じたんだ。スキル以外の方法を使った根拠は?」


「タブレットをバックラーの後ろにかくすそぶりをみせたからです。そのバックラーが鑑定をする法具だから、とか理由があると思いました」


 法具だろう、ということまで推測するか。

 なかなかの観察眼だけど、なんでここまで踏み込むんだ?

 冒険者は訳ありなのが常だ。

 そしてお互い危険が無い限り、余計な詮索はしない。


 クローリスはそれを簡単に破ってくる。

 なぜそうするのか理由がわからないと、ちょっと今後が不安になるな。


「僕に秘密があったとして、それを暴こうとする君とパーティを解消したくなるとは考えなかった?」


 軽く牽制してみる。


「うーん、解消するというならしかたないです。秘密を共有して対等な関係を結べないなら、異世界人でつくったクランの時の二の舞になりそうで怖いんです」


 困ったように眉尻を下げながらクローリスが首をかしげた。

 なるほど、クローリスがあえて秘密に踏み込んできたのはこちらが対等を許すか試すためか。

 対等じゃなかった時の経験がよほど嫌だったんだろう。

 

 もう一度クローリスを見る。

 はっきり言えばクローリスの考えは駆け引きですらない。

 良くて捨て身の虚勢だ。それは本人も分かっているだろう。

 でも、リスクを負った上で、なお結果をつかもうとしているのは僕も一緒だ。

 

「リオン、リーダーとしては事情を話そうかと思うんだけど、どうかな?」


「うん、いいと思うよ。私と同じようにクローリスに接して欲しいな。パーティだもの」


 リオンが微笑んでくれた事が最後の一押しになった。

 クローリスがよからぬことを考えていないなら、いずれ法具については明かすつもりだった。

 リオンの時みたいに、クローリスを危険にさらしてしまったら、僕は後悔しない自信はないし、リオンに後悔させない自信がない。


 だから僕はバックラーと指輪という一対の法具「ジョアンの書庫」について話した。

 鑑定だけではなく、マジックボックスなど複数の機能をもっていて、まだ他にも機能があるかもしれないとも話した。


 クローリスは大体おとなしくきいてくれた。「チート」という言葉をたまにつぶやいていたのは些細なことだろう。


「以上が僕の秘密だけど、これで対等な関係になれるかな?」


「はい。試す様な事をしてすみませんでした。これからよろしくお願いします!」


 三人の顔に笑みがうかぶ。

 ようやく「プラント・ハンター」に新メンバーを迎えられた気がする。


 それからはクローリスが宿にもどるまで和やかに雑談をした。

 パーティ共通の目的についても話したけれど、「うわ、天然甘味料!」とよくわからない感想を言われた。

 リオンが無言で叩いてきたけど、同じように接して欲しいっていったのはリオンだろう。

 時々理不尽な事もおきるけれど、それもパーティで活動するなら甘受すべきことなのかもしれない。



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