第03話【お役所仕事な受付嬢は実はやり手でした】



 僕らはリザさんの有無を言わさぬ強制執行に固まったまま、差し出された銅プレートを受け取るほかなかった。


名     :ザート

位階    :銅級十位

所属パーティ: プラント・ハンター 


 銅のプレートに刻まれた名前とパーティ名はうれしいけれど、割り切れないものがある。第一印象はすごくまともなんだけどな。リザさんも妹と同じくアレな人のようだ。


「さて、面倒な手続きも終わったところで、なぜ昇級試験が無くなったのか説明しなくちゃいけませんね」


「はい。今までは仕事の取り合いにならない様に、などの理由で定員があったんですよね? それがなぜ無くなったんですか?」


 リオンと二人でこくりとうなずいて耳を傾ける。

 契約させてから内容説明し始めるなんて、奴隷商人もやらない事をあっさりしてのけるリザさんが怖いので、もうこのまま話をすすめてもらう事にする。


「実はレミア海の航路で大規模な海難事故があったんです。水棲魔獣に襲われた船団が壊滅。37名の銅級冒険者が乗船していましたが、捜索した第三レミア港ギルドからの報告で生存者ゼロ、ということがわかりました」


 真面目な顔をしたリザさんから告げられた内容は想像以上に重かった。

 改めてまわりを見渡せば、職員がいそがしそうにしている。それに暗い顔をした冒険者もちらほらといる。


「もう想像がついていると思いますが、銅級冒険者が一気に足りなくなったので、ギルドは一時的に順番待ちをしていた鉄級一位をくり上がりで銅級に昇格させることを決めたんです」


 そうだったのか。原因となった事故はいたましいけれど、ギルドとしては港湾部の冒険者不足を放置するわけにはいかなかったんだろうな。


「でもせめて説明して欲しかったですよ。有無を言わさず登録するんですから」


 理由がわかっても、強引な登録にはちょっとだけ理不尽を感じていたのでぼやいてしまう。

 

「ギルド本部が把握している鉄級一位は三十二名でした。貴方たちはこれから第二レミア港に拠点を移すようだったので、万が一でも枠がうまってしまう前に、はやめに銅級への登録手続きをさせてもらったんです。ギルドとしても港を拠点にする鉄級一位冒険者に銅級になってもらいたいですから」


「え? 僕らが第二レミア港に拠点を移すってどうしてわかったんですか?」


「装備が新調されているのに、マントだけが古いままでしたから。港についてから海用のマントを買うからだろう、と予想したんですよ」


 推理は以上、とばかりにリザさんが不敵な笑みを浮かべた。完璧な理由と推理。さすが本部の受付嬢だ。アレな人、とか思ってごめんなさい。


「なるほど、鉄級一位の中でも港の欠員補充として適当な私たちを枠内にすべり込ませた、ということですね」


 リオンも納得したようだし、こちらから言うことはない。


「では、改めて、パーティ『プラント・ハンター』を銅級十位とします。今後は第三長城壁の三出城を拠点とする事ができます。先ほどにお話しした事情の通り、ギルドとしては第三港を拠点にしていただけると助かります。よろしくおねがいしますね?」


 ここまではめられては、うなずくしか無いだろう。


「ええ、ここで少し羽をのばしたら第三港に向かう事にします」


 始終手玉にとられ続けた僕らは、この場で第三港を拠点にすることを約束した。




 



   ――◆ 後書き ◆――


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