第29話【キッケル遺跡・発掘結果】

 初戦での反省をいかし、敵は極力安全に倒す事にきめた。

 具体的に言えば、身体強化も魔力操作もジョアンの書庫も解放することにした。


 もちろん周囲を十分に警戒して、他の冒険者に見られないようにしている。

 ”索敵もどき”も楽にできるようになってきたし、着実に進歩はしている。


 今も一匹、斜め後ろから駆けてくるコボルトが感知できた。


「スリングショット!」


 こぶし大の石を放つ土属性の下位魔法を魔力操作で少し加工した。

 放つ石を単独ではなく、細かい砂利状にしてよけづらくしている。

 大きな鳴き声とともにコボルトが目を押さえ派手に転ぶ。


 それでも立ち上がるコボルトの腰を、ナイフを抜こうとした手ごと斬った。

 強化した身体で走り抜け、後ろから伸びてきた二匹目のナイフをよけ、強化した膂力で押し切る。

 わざと見せた隙に飛び込んできた三匹目が仕掛けたトラップに足を取られる。

 転んで無防備なった首を跳ね飛ばす。

 

「よし、終わり」

 青白く光る石畳の上に落ちている、コボルトの牙や爪の形をした凝血石を拾い、残っていたナイフも回収する。


 最後のコボルトの足下に近づいた瞬間に格子状のトラップで転ぶようにしておいた。

 これが地味だけど効く。

 ずっとトラップをおいていてもかからないけれど、最後の一歩で引っかかるようにすればほぼ100%かかってくれた。


 この四日間コボルト相手に色々な戦い方をして、ダンジョンでの立ち回りを学んでいる。

 我流なのは仕方が無い。ソロ冒険者自体が第二要塞には居ないし、いたとしてもお互いに秘密を抱えているのだから成果は期待できない。

 つまり、結局生き残って自分で習い覚えなくてはならない。

 

 正直そこまでして秘密を守る必要があるのかと考えたくなるけれど、自重して、先例には従うことにしている。


   ――◆◇◆――


「第一回! キッケル遺跡発掘調査、結果発表ー!」


 ……虚しいな、これ。


 場所はコロウ亭で会場は自室、参加者はもちろん僕一人だ。

 床には一面に麻袋を敷き詰めて汚れないようにしてある。


「じゃあ一個ずつだすか。バインド、ソート、プット」

 同じ種類のものをまとめ、分類別に並べ替え、一個ずつ排出していく。タイムラグはもう無いし書庫の扱いにも大分慣れたな。


・小石

・魔砂

・キッケルのナイフ

・キッケルの槍

・キッケルの盾

・キッケルの神像

・キッケルの瓶

・キッケルの壺

・キッケルの釜

・キッケルの……


 どれも見たことのある捨て値で売るモノばかりだな。

 あ、神像があったか。これは確か港町で売れるって話をギルドできいたな。

 キッケルが並んでいるから読み飛ばしてしまった。



・キッケルの皿

・灼炎石のナイフ


 機械的にページに滑らせていた指をとめて確認する。

 灼炎石は魔法を強化する魔鉱の一種だ。

 白色とブランデー色の縞模様が特徴で、名前の通り炎属性の魔法を強化する。


「おお、すごいの発掘しちゃったな」


 あの遺跡のどこに埋まっていたのかはわからないけど、鞘から抜いた刃はまったく濁る事無く室内の灯りを反射させている。

 柄頭に付いている灼炎石と相まって全体が炎のようだ。

 もしかしたら石室みたいな場所で保管されていたのかもしれない。


「うん、これは売らずに使うことにしよう」


 発掘品は魔物の落とすアイテムと同じく自由に売買できる。インゴットにしてもらってもいいし、市場で直接売っても良い。

 思わぬ所でサブウェポンが手に入ったな。


 その後も書庫から出しては入いれを繰り返しているけれど、いい加減だるくなってきた。

 もうざっと内容を見てメシでも食いに行くか。


 そんなことを考えていたら目の前に小さな石が出てきて麻袋の上にボスと落ちた。


「あれ? 小石なら最初に確かめたんだけど……」


 もう一度しまって名前を確認する。


・スリングショットの石


 ああ、土魔法で出した石も回収できるのか。


「……いらないだろ。次から排除するようにしよう」


 またつまらぬものを回収してしまった……。







   ――◆ 後書き ◆――


いつもお読みいただいている方、新しく目を通して下さっている方、ありがとうございます。


 主人公はマジックボックスのエネルギー源にしている魔砂を回収していますが。ついでにお宝探しもしているのです。

 子供の頃、化石掘りとかあこがれましたね。


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