第23話【意外と快適な男宿】


 リオンと小洒落た酒場で乾杯して今日の成果や周辺のスポットについて語りあった。

 料理も子鹿亭に勝るとも劣らない味で、値段もちょっと高いくらいだ。


 子鹿亭に泊まろう泊まろうとぐずるリオンをビビに預けてこっそり予約していた宿にむかう。


 緑色のツタのエンヴィやこぼれるようなピンクの花を咲かせたアルガンザスのゲートをくぐって石の街を歩いて行くと、目当ての宿が見えてきた。


タルが店先に並び、冒険者や隊商の男達が中からあふれ、ジョッキを片手に大きな肉にかぶりついている。僕のような大人になり立ての新人も楽しそうに飲み食いしている。

 

「これだよ、こういうのだよなー」


 子鹿亭だって悪いところじゃない。設備の快適さでいえば明らかに良心的だろう。

 でも居心地というのはそれだけじゃないんだよ。


「夕方に予約したザートです」


 扉が外された入り口を通り、カウンターの狐獣人のお姉さんの所に行く。


「はぁい、コロウ亭にようこそ。ザート君ねぇ。カギはこっち、身体を拭くならこの裏の洗い場をつかってね。暖炉が反対側にあるから暖かいはずよ」


 頭を下げて地下の宿屋階に向かうとお姉さんがひらひらと手を振ってくれた。ちょっとドキドキしてしまう。


 本当はさっそくあの輪の中に加わりたいけど、今日はもうたくさん食べてしまった。

 

「ちょっと風に当たりたいな……」


 子鹿亭とは違う、石がむき出しのすこし広い部屋の窓は大きく、歩いてでられるくらい広くきられていた。


「おお……ベランダか」


 要塞の内側にあるはずなのにベランダがつくられていた。


 隣の壁まで三ジィもないのに、目隠しが斜めに立てられているせいで開放感がある。

 隣の部屋も向かいの壁も同じサッシが並べられているので気まずさもない。


 これなら快適だ。部屋も酒臭くならない。


「常宿はここできまりかなー」


 窓際に置かれていたリクライニングチェアをベランダに出して一つのびをした。



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