第17話【副マスもヤバい】


「うちのギルドマスターがすいません。この人自分が若作りだって確認したくて初対面の人にいつもこういう事をするんです」


 幼女(偽)がギルドマスターだったのか。

 後ろでぷるぷるしてますけど。


「だって、こいつ、こいつがノリ悪いからぁ!」


 泣きながらマーサさんが抗議してくる。

 なにそれ。わかっているならだまされたふりをしろって事?


「ララ」

「はいはい」


 リズさんの後ろにいた羊獣人さんがギルドマスター(ニセ幼女)を連れて行ってしまった。

 残されたリズさんと僕のため息が重なり、視線が交わる。


「じゃ、まずは座って? 私はリズ。ここ冒険者ギルド、ブラディア山第二要塞支部の副マスターをしているわ」


 支部名なっが!


「支部名はブラサン第二いいわよ」


 支部名だっさ! 


「……なにか不満があるようね」


 そんなことを言いながらリズさんが骨で肩トントンをしている。

 それは受付嬢の態度としてどうなの? 


「不満なんてないですよ? でもなんで骨を持ってるかきいてもいいですか?」

 にこやかに訊いてみた。


「ボルクウルフの大腿骨ってマッサージにちょうどいいのよねー」


 それだけ?

 答えになってないよ?

 第一印象は真面目な知的メガネ美人だったけど、訂正だ。この人もヤバい。


「そうですか。では改めて、僕の名前はザートです。よろしくお願いします」


 スルーして本題へと入ろう。条件はさっきのとおり、ソロの初心者でもできる仕事だ。


「初心者でソロっていうと結構厳しいわね。ザート君のスキルって何系?」


 リズさんが骨をカウンターに置き、ファイルをめくりながら訊いてくる。

 凶器を手に取れる場所に置かないでください。


 さすがにギルドでもスキルの詳細まで聞くのはマナー違反だ。

 それでも、魔法使い系か戦士系か、スキルの位階はどれぐらいかは伝えないと、ギルドから仕事をもらえない。


 僕の場合、法具を前提にした活動をするとは言えないので、事前に考えておいた表向きの戦闘スタイルを伝える。


「軽戦士系です。身体強化はそれなりに練度を上げています。武装は見ての通りバックラーとショートソードを使います」


 練度とはスキルの位階とは別に使い込んだ度合いだ。

 練度が上がるほど発動時間が短縮できたり、出力が上がったりする。

 僕には身体強化と魔力操作の基礎スキルしかないけれど、二つの練度は相当(異常)だと自認している。


「なるほど。これは他の受付嬢にも伝えるけどいい?」

「はい」


 一々同じ事を訊かれずにすむんだから当然イエスだ。

 リズさんは今言ったことを別のメモに書き付けた。


「じゃあ最後に」


 ん?

 リズさんがファイルから目を上げた。

 なんだろう改まって。


「ザート君はどういう冒険者になりたいのかしら?」






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