表と裏ー第3章-コウに会える

家に帰ってからも、しばらくぼっーとしていた。なんだか、夢みたいだ。頭の中で、文字が飛んでいる。イケメン、アイドル、ニク、手をつなぐ。デート。

冴えない人生18年で、一番最高だあ。

思い出しては、ニタニタ。ボー。指輪を見て、またニタニタ。

はあ、最高。

いかれた頭で、カバンの中を整理する。

あっ、この袋。

ニクのおばさんに、貰ったものだ。

中を開けてみると、トラベルセットが3個はいっていた。わあ、うれしい。その中から、折り曲げたメモ用紙が落ちる。

(なんだろう。)広げてみると、おばさんの携帯と、自宅の電話番号とニクには内緒で女同士でしゃべりたいので、連絡くださいとある。

(コウとも、会える?会いたい。ニクには悪いけど。女同士色んな話がしたい。)



早速電話をすると、来週の水曜日に3人で集まることになった。

でも、コウと私の二人でもいいけど。おばさんもか。ニクの話だと暇してるって言ってたから、輪にくわわりたいのかな。


トゥルルルー

ニクからメールが入る。

あのデートの日から、毎日。(指輪、失くさないようにな。大好きな鈴へ)短いけど、うれしい。ニクには、3人集まること言ってない。まあ、事後報告でもいいか。


神崎家

ノックをすると、おばさんがにこやかに出てきた。

「いらっしゃい。二人で待ってたわ。コウは、なかでまっているから。」

(やっと、会えるね。うれしい。でも、ハードスケジュールなのね。痩せたかしら。)


案内されて、部屋に入ると、にこやかなコウが出迎える。そう、別れた頃の面影。一番好きな、服を着て。写真の中で笑っている。

(えっー、仏壇。写真。わけわかんない。どういうこと?涙が、勝手に溢れてくる。)


「丁度、オーディションに受かって間もない頃なの。交通事故で。即死だったわ。あっけなく。

まさか、私より先に逝くなんて思わなかった。涙がでないくらい泣いたわ。大好きな、鈴ちゃんに会えるなんて、喜んでくれると思うの。焼香してくれる。」

ただ、うなづく。(嘘だ。こんなの。信じられない)涙って、限りなくでるもんなんだ。もう、ぐしゃぐしゃだ。



大分時間が経った


あれから、違う部屋のテーブルの前に座っている。


「ごめんね。ニクも、コウの死言えなかったんだね。こんな時に、話すのもどうかと思うけど。また、いつ話せるかわからないから。ニクのことも、聞いてほしいの」

(ニクのこと?泣きすぎて、目がショボショボしている。思考も、疲れている。)


「あの子、今まで、いつも病弱な自分のために犠牲になってくれた。コウの死に責任を感じてる。アイドルも、やり遂げなきゃ。って、必死なの。

でも、身体や頭がついていけなくて、神経症の薬とコウを皆に忘れられたくないからって、女性ホルモンまで飲んで、コウを必死で演じてる。どうしても、演じきれなくなるとボロボロのニクが、顔をだす。その度にあの子、自分を傷つけるの。殺傷行為、身体に無数の傷があって。何度、止めたか。でも、止められなくって。

あなたの写メ見た時、もしかしたら。あの子を、止めてくれるかもって、ごめんね。親もできないことを頼んで。虫がいい話よね。そばにいてあげてほしいの。最近、ほんとの笑顔みたの久しぶりだから。」


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