表と裏
クースケ
表と裏ー第1章
ピンポーン
家の中ににチャイムが鳴りひびいた。
ふと、ウッドブラウンのペンキが剥がれかけ、
肌色の木目が顔を出す
時計に目が行った。
2分45分約束の15分前、流石だ。
その時計には黒く
細かいものが木の木目に
積もっていた。埃だ。随分と前から触れていなかった。
お世辞でもきれいとは言えない
「はーい」と大声で返事をして
二階の自室にいた私は、
用意したバックを右手で持ち。
急いで、玄関先に駆け足で向かった。「おかあさんいってくるね」
「気を付けていってらっしゃい」
その際
体重の重みが木の床に伝わり、
バタバタと慌ただしい音が家じゅうに響く、
靴を履いて扉を開けた。ガチャ「はあ」
約束の時間の麗奈
「鈴、おはよう。この日が来たね。」
いつもより、濃いめにメイクしている。
赤っぽいシャドーにピンクのリップ。
女でもドキッと、するほどかわいい。
三か月前に遡る。
麗奈に地下アイドルのヒトトキのコンサート行かないかと
誘われた。
それから大分経ち
コンサートの前日の昨日
学校で、明日のために服を見に行かない?
と急に誘いがあった。
その頃の私は生活に余裕がなく、
生活だけでもぎりぎりだった。
でも 麗奈の誘いだ、割り切るしかなかった。
うどん屋さんのバイトで稼いだお金を切り崩し
最終的に私が決めたワンピを
麗奈とお揃いで買った。
「鈴、このワンピにして正解だね。シルエットがフワッとしてて
大人っぽくていいね。」
そう言ってくれると救われる。
麗奈はピンク、私は黄緑。
(本当は、私も可愛いの選びたかったけど。
ブスな私に似合わないと麗奈に引け目を感じていた。)
高校生1年の時、内向的で
声を掛けられなかった私に、
積極的に声を掛けてくれた人
それが、麗奈だった。
(それからというもの私にいろいろな 初めてをくれた 彼女には感謝の気持ちしかない。)
私たちは今、ライブハウスに行く電車のなかにいた、
麗奈「きっとあの子たちもコンサートに行くんだよ。」
いつもと違い テンションが上がってるのが、
すぐに分かった。
「それにしても...」
みんなおしゃれを頑張っている。
張り切っているのが私だけじゃないと思うとちょっと 気が楽になる。
その中で、一際 目を引く女性がいた
彼女の服装は
胸元は、胸の谷間がはっきり見えるぐらい強調し、
ミニスカで、黒の網タイツを履いていた。
会場には、30分前についた。
周りに集まっていた人の服装はさらに奇抜だった。
さっきの網タイツも、普通に見えるほどに、
おかげで、二人共話のネタは尽きることはなかった。
受付が始まった
外見からすると、部屋の中は結構ちいさい。
人がたくさんいて熱気がすごいし薄暗闇で、あまり見えない。
立ち見だ。隣の人が、身近にいる。
暗闇に慣れたころ舞台の照明がひと際、かがやきお目当てのヒトトキが、舞台袖から出てくる。「きゃー、フタバー、ミツシー、ユニー」の声が、重なり合って膨らむ。
皆、この日のために用意した思い思いの応援グッズを取り出す。あいた時間に作った。内輪型に、自分の推しメン(好きな、メンバー)の名前を書いたり、言葉をかく。作業中も、熱がこもる。私は、とりあえず、ペンライトだけにしておいた。暗闇で、赤や黄色などの色が発色する。夜空の花火みたい。そう、この空間だけは、日常から離れて楽しむ。
熱烈なファンは、陣を組み推しメンに向かってエールをかける。応援団みたい。
初めての経験。ワクワクドキドキの連続。
皆さん、「こんにちは、今日は、僕たちのコンサートに足を運んで頂いてありがとうございます。これから、メンバー紹介をしていきます。」
(合間に、ファンの歓声。)180センチは長身で顔が日本人離れしている。
「僕こと、メンバーで最年長の双葉です。趣味はスポーツです。見るのも身体動かすのもすきです。よく、ハーフですか?って、聞かれるけど。正真正銘の日本人男子です。よろしくお願いします。」またもや、きゃあ~。
順番がずれて、右側の色白で可愛い、メンツが真ん中にくる。麗奈を、男の子にしたような顔だ。
「光志こと、ミッシーです。最近、乾燥してきたけど。皆さん風邪にきをつけてね。」可愛いーの歓声。うん、納得
最後のメンバー
「ユニです。元気がとりえです。でも、何もやってませんが、気分のテンションの上下が激しいのでみなさん、気にしないでください。16歳です。メンバー最年少で、皆に可愛いがってもらってます。よろしくお願いします。」元気な、シャキシャキタイプ。
鈴(あれ、ユニって、何だかどこかで見たような。どこだっけ。気のせいかな?)
1曲目は、ダンス主体のノリノリの曲。ファンは、錆の部分を一緒にはもったり、一緒に踊りだしたりと
狭い部屋が、ますます狭く熱気がこもる。
3曲続けて歌う。なかなか、歌も踊りも上手い
麗奈がいうには、地下アイドルはテレビによく出てるタレントからしたら、夢をあきらめない人達が会社を立ち上げ小規模ながら運営していて、ここ5,6年で20ぐらいの地下アイドルグループが、出ては潰れてというスタンスらしい。
1時間は、経っただろうか。合間にクイズタイムがあって、全問正解者に少しながら商品を貰える。舞台に上がって、目の前でヒトトキのメンバーが見れるので、感激で泣きだした娘までいた。
興奮冷めやらぬ気持ちで、終了して部屋から出ると、物品タイムだ。
メンバーのプロマイドや、キーホルダーとか色々なグッズが、売っている。
麗奈は、お目当ての双葉のプロマイドを3枚と、ヒトトキの文字をかたどった、金色のキーホルダーを買った。しめて、2,500円。高いと、思ったのはまだ、好きな推しメンがいないせいかも。
これが、終わると握手タイム。
2階の階段上がった所の、白い台の前にヒトトキのメンバーが座っている。
ファンが、列になって並び、一人一人声かけてくれながら、握手してくれる。
イケメンに手を握られるなんて、悪い気しない。ユニの番に来たとき、やっぱりどこかで見た気が。すると、ユニも(あっ)と少し声をもらす。
でも、すぐに平常に戻る。
しばらくして、階段を降りようとしたときに清掃員のおじさんから、しろいメモ書きを渡される。
見ると、携帯番号が書いてある。
神崎 コウ(えっ。)
何何、好奇心から麗奈が覗き込む。「何でもない、ゴミだった。」
「ふーん、何だあ。おじさんの電話番号かと、思った。」
(内心ドキッ)
「見ず知らずの清掃のおじさんから?」
「だって、きっかけかも」
「やだー、やめてよー」と、たわいのない会話で盛り上がる。
帰りの電車の中
(神崎 こう。そうだ。思い出した。中学の時、親の転勤で1年だけいた積極的で、明るい性格、すぐに皆に打ち解けてたっけ。席が近いので、よく話をした。)
「ねぇ、鈴 聞いてる?ねえってば、イケメンすぎてハマった?ねぇ、また行こうよ。
ちなみに、3人の中で誰か気にいった?私ユニ好きだから ユニ意外ね」
「別にいいけど。麗奈の彼でもないのに」
(それにユニは女だ。いえない。だから、口止めしたくてメモを渡したんだ。)
家に帰って
何だか、コンサートは、すごく興奮したし面白かった。
アイドルと、ファンの距離感。まさに地下アイドルだからだ。でも、ユニに電話するのは、何だかおっくう。麗奈やファンのみんなが男の子だと思ってみてることが、後ろめたい。グリム童話で、秘密を知った男が抱えきれなくて穴に向かって王様の耳は、ロバの耳って叫ぶシーンがある。その気持ち、すごくわかる。
コウとは、懐かしいし、会いたい。でも、あのことが蘇る
転校するまえに3人は、すごく仲が良かった。
そう、3人。コウの双子の弟 ニク 過呼吸もちで神経症
だった、
そんな、弟を心配して、別クラスだった私とコウは休み時間のたびに私と、屋上だったり廊下だったり教室に集まった。
ニクは、一卵性双生児で瓜二つ。でも、性格は、内向的で臆病で人前に出るタイプでは、ない。コウとは、正反対だ。
そういえば、麗奈が「ユニってときどき180度性格が変わるの。おどおどして、でもそれがとても、かわいくてファンの間で、可愛い二重人格って言われてる。」って、言ってた。
それって、ニクと入れ替わるってこと?
ぐちゃぐちゃ考えても仕方がないから、携帯電話をかける。
「コンサートきてくれたんだ。ユニから、きいた。握手したって。」
(うん、何だか。まえは、無口だったのに、大人になったんだ。)
「高校に、なってできた友達に誘われて。まさかユニとは、思わなかった。びっくりしてる。」
「まあ、俺がオーディションの時に発作が出て変わりに出て受かってから、交互に出てる。社長も、面白がって。半面、身体の調子がいい時だけでいいって言ってくれてるんで、気が楽なんだ。」だから、女のユニがいた訳か…。
「あの時は、ごめんね。あれから、会ってくれなくなったから。言えなかった。」
そう、あの時ー三人でいつものように、彼らの家でつるんでいた。家族は、共働きで家にいないので、格好の遊び場だ。ユニも、用事で席を外したとき。
いきなり、ニクが自分に覆いかぶさってきた。
「えっ、何もしないから。ただ、こうしていたい」
その時は私は病気で弱いニクを男として、意識していなかった。びっくりして、跳ねのけて家に、全速力で走っていた。あまり覚えていないけど。それからは、神崎姉弟をひたすらに避けた。
それから、しばらくして、親の転勤で引っ越して行ったのを噂で聞いた。
「うん、もういいよ。過去のことだから。体調は、いいの?」
「自分の性格かえたくて、はじめたんだ。でも、緊張しすぎるとだめだな。2年目になるから少しは、トークとか出来るようには、なったけどね。」
「変わったよ。だって、会話続かなかったから。」
「はは、だって好きなこに避けられて、意地でも変わらなきゃってね。鈴は、彼氏できたか?」
(うっー、麗奈にひっついてたら出来るわけないわ。トホホ、えー好きなっこって。何だか、口までうまくなって。)
「10人、募集中だよ。」
「大きくでたなあ。俺、募集中だから。よろしくお願いします。」
「えっ、えーでも、ファンに殺されそう」
「大丈夫、コウに譲ってもいいし。地下アイドルって、金にならないからほとんどバイト生活。それに、メンバーで最近、結婚したやついるから。」
「えー、そうなの?ちなみに誰?」好奇心が、ムクムク湧いてくる。耳元で、王様の耳はロバの耳ーと、聞こえる気がした。
「今度のデートの時に、色々話そうよ。」と、さえぎられる。
「阿木駅の銀の竜の前で、来週の火曜日の4時は、どう?」
(なんか、ユウの後ろにくっついてた頃のニクのイメージが変わってきた。っていうか、このまま付き合うの私?別になんの不満もないけど。でも、私ちっとも変ってない。2年ぶりの再会だし。女子にモテモテなのに、わざわざ私?)
火曜日ー約束の日
何だか、あの電話の後から生きた心地しなかった。麗奈が、ユニの話をした時も。
そのユニと、デイトの約束したなんて口がさけても言えない。
まあユニは、正確には二人で入れ替わっているわけだから。なんて、いい訳にならないか。
今日はおしゃれをするべきか、ユニのファンに目立たないようにするべきか、悩んでジーパンにシャツのカジュアル系にする。
昨日は、興奮して眠れなかった。いくら、知ってるとはいえ男の人だし。2年も会っていないんだし。どういう話をしたらいいのか。うーん、コウも誘えば良かった。
10分まえについた。
銀の龍は、
待ち合わせスポットとしては人気がなく
待ち合わせするのに最適な所だ。
ジーパンに英語の文字のロゴが真ん中にある黒いシャツの男の人が、立っている。帽子を目深にかぶっているから顔が、わからない。近寄ると、帽子を少し後ろにずらす。
アイドルのユニだ。いやニクだ。ああーまぎらわしい。握手会の時の顔だ。
「やあ、きてくれたんだ。うれしいよ。また会えるとは夢にも思わなかったから。」
(ほんとうに、ニクなの、何だか、すごく変わった。こんなに、人の顔をみて話できなかった。)
「なんか、変わった?性格が、積極的になった?」
「まあ、少しはねぇ。アイドル業やってから。変わらなきゃってね。でも、だめな時はテンション暗めだけどね。そういうのもキャラの一部だって見てくれてるみたい。鈴も少し、リップのせいか大人っぽくなったな。可愛いよ。でも、今日はワンピースじゃないんだ。」
「あ、ありがとう」(ひぇー、そういうことが平気で言えるようになったんだ。
あれ、あの時って、姉のコウじゃなかった?もう、聞いてるか。)
「今日、コウも誘えばよかったね。」
「コウ…。あいつ忙しいからね。バイト掛け持ちしてるから。」
なんか、ふと表情が沈んだ気がする。
「まあ、伝えとくよ。今日、これからどこ行く?野菜パフェって、だいぶまえに流行った所があってまだ行ったことないからそこ行きたいな。」
「今、タピオカでしょ。でも、人があまり集まる所は、避けたいから助かるけどね。どこに、あるの?」
「待って、地図アプリ呼びだすから。」
丁度、その時ニクの携帯が鳴る。「あっ、忘れてた。いいよ。1日ぐらい。ああ、じゃあ。1か所よってから彼女つれて家よるわ。」
「ごめん。家に忘れ物。母さん今日は休みだから、彼女連れていくっていったら地球がひっくり返りそうな勢いだったぜ。」
「もう、星の数ほどいるかと。」
「まさか。ファンとは、外ずらをつくろってしまうから。ダメなんだ。」
野菜カフェ「イロハ」
店内は、人がまばらでポツポツとしている。
「ねえ、何にする。私、決まってる。来たいと思ったときから、トマトとアボカドのパフェ。私のおすすめは、さやえんどうかピーマンいり」
「お前、俺が緑色野菜ダメなの知ってて言ってるだろう。」
「もち、中学の頃、学食のチャーハンから器用にグリンピースだしてたり、野菜炒めからピーマン出したり、その度にコウがかき集めて食べてたじゃないの。」(あっ、また表情が曇ってる?)
「へんなことばかり、覚えてるな。鈴は、おまえも学食のデザートにカレーパンいつも食ってたな。」
「うん、流石にあの時みたいには食べてないけど。やめれないなあ。」ぷっ、お互い様ってことで。笑顔になる。
私は、待望のトマガドパフェ。一口大にきった緑と赤のコントラストが可愛い。中のソフトクリームも、野菜が入っている。
ニクは、迷いに迷って赤パフリカ、レタス、トマト。野菜のソフトクリームのコントラスト上にリンゴが乗っている。
「ふーん、味が無難なものばかりだよねぇ。」ちょっと、慣れて意地悪くいってみる。
「別にいいだろう。野菜は野菜だ。」と、ちょっと拗ねる。懐かしい。やっぱり、ニクだ。気分を損ねると、少しだけ右側の眉が上がる。
ニク「写メ取ろう」携帯の枠に合わせてかなりの接近。目の前には。山盛りパフェ二つ
(緊張。でも、ニクは、ファンサービスで慣れてるのね。)
「母に送るわ。誰を連れてくるかもわかるから。」
「なんか、照れるー。」彼らの親は、毎日というぐらい家にいってたのに2、3度しか見たことがなかった。
二人とも甘いけど野菜得有の味が消えてない山盛りのパフェを昔話を交えながら平らげた。
続く
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