放課後TEA PARTY

さっさん

第1話 プロローグ

 昔々、あるところにお爺さんとお婆さんが居ました。

 お爺さんは還暦を過ぎて耄碌もうろくしていましたが、シルバー人材センターでトラックの配送業を紹介してもらい生計を立て、お婆さんはアフィリエイトで副収入を得ながら、家事をしていました。


「〇〇運輸です、お荷物をお届けに来ました」


「いや、さっき受け取ったよ!」


「あれ? わしは次、どこへ届けるんだっけ……あ、電話だ。はい、もしもし。……え? 今日、シフトに入ってない……?」


 お爺さんには高校生の孫がり、孫への仕送りの為に馬車馬のように働いていました。

 お爺さんの息子<太郎タロウ>は現在刑務所に収容されており、見た目だけは百点の結婚相手とも離れ離れになり、孫は一人暮らしなのです。

 めでたし、めでたし。


 ……さて、俺の名前はミオ・アキヤマイアン。日本が舞台の筈なのに何で横文字? とかツッコミを入れるのはしてくれ。ここは創作の世界、フィクションだ。

 あと、残念ながら冒頭で述べたのは真実だ。

 俺は高校生で、現在独り暮らしをしている。父親は俺が小学生の頃にブタ箱行きになり、祖父母の実家に引き取られた。何でも、教会に火を放ったとかで、あと数年はシャバに出てこられないらしい。俺はその時、幼いながらも放火の罪の重さを知った。

 母の方はと言えば、俺と一緒に祖父母の実家に身を寄せていた。だが、俺からの切望で一人暮らしにしてもらったのだ。と言うのも、アラフォーの言ってしまえばババァが珍妙なアクセサリーで着飾り、コスプレの大会に出たりネットで写真集を出したりしているのだ。

 それだけならまだ我慢できたかもしれないが、「息子よ、この私に逆らってよいのか? 今こそ本当の力を見せる時が来たようだな……」とか「い、痛い! やめ……よ、よせ! すのだ! 私はあと二回、変身を残している……」とか。四六時中不可解な言葉を発しているのだ。


「ぐああぁ!! 右手が、早くザナドゥを……ハッ、暴走する前に……息子よ――」


「どうしたの、母さん! ……あ、うん。絆創膏、取ってくるね……」


 料理中、包丁で指をケガしただけでこの始末である。ようは中二病なのだ。

キャラへのなりきりだとか中二病だとか皆は言うが、中学時代から二十年も経って中二病って、何? というのが俺の本音ではある。小学校の時の授業参観日を思い出しただけで俺は死にたくなる。あと、際どい服を着るのはやめろ。

 ともあれ、高校生になった俺は祖父母の家をも離れ、学校の近くに居を構えることになった。

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