第24話・いろいろとコツがあるのよ
さて、これからいろいろと人間関係を作らないといけないのだけれど、そんな簡単に作れるモノじゃない。
なにせここはイベントが少ない世界。自分から進んで動かなければ、何も起きないのだから……。
ただ、警戒心の低いアサイ村の人たちでさえ、そこそこの関系になるまでに半月ほどかかった。そんな訳だから、普通の人達から信用を得るなんて事は時間がかかるのが当たり前だ。
ここは焦らずにじっくりとやっていかなければならない。まずは、最初の一歩「切っ掛け作り」が重要になってくる。
んで、この「切っ掛け」を作る方法なんだけど、いくつか方法がある。
一番簡単なのは、ギルドの依頼をこなして目立つ事だ。これが時間的に一番手っ取り早く信用を得られるだろう。
でも、この方法にはリスクがある。目立てば見返りも多くなる反面、面倒事が舞い込んだり、危険な依頼も受ける事も増えるだろう。
それは「出稼ぎ」の俺には荷が重過ぎる。
で、俺の場合は時間はかかるが着実な方法でいく事にした。
方法は簡単「行きつけの店をつくる事」、それと「知人の伝手を頼る事」の二つをメインにして営業の基本「足で稼ぐ」この三本柱でやっていこうと思う。
後半の二つは読んで字の如くだけど、「行きつけの店をつくる事」にはちょっとしたコツが必要だったりする。
簡単にご紹介しょう。
まずは「店選び」からだ。何でも良いって訳じゃない。店の客層で入ってくる情報が変わってくる。今回の店はアドルさんからの聞いた店なんで、客層は冒険者が多い、なので入ってくる情報はダンジョン関係が多い事が予想される。
俺の場合、商売の情報も欲しいので雰囲気が違う店をあと2~3軒行きつけにしておく必要があるが、その辺は焦らずにやっていこう。
次に店に入ったら、自分が座る席を決めておこう。できればカウンター席が好ましい。なければ店の壁際の席を定位置すると良いだろう。その際に来店の時に必ず注文する物も決める事。これは大事だ。
「この客はいつも、これを頼む」と店員に印象付けられたら成功だ。
あとは店主や店員、常連客なんかと仲良くなるようにこまめにコミニュケーションを取れば勝手に情報が入ってくるようになる。
まぁ、ザックリとしたコツではあるがこれが案外と役に立つのだ。
その店「
店に入るとそこそこに混んでいた。都合よくカウンター席が空いていたのでそこに座ると、すぐに店員から声を掛けられた。
「お兄さん、初めて見る顔だね」
この店のマスターかな?カウンターの向こう側で串焼きを焼いている。
「ええ、出稼ぎでこっちに来てるんですよ。ギルドのアドルさんから美味しい店だって聞いて来たんです」
「お!アドルの紹介かい。それならこっちも気合い入れないとな!」
ずいぶんと気さくな感じだ。これならすぐにでも良い関係を築けるだろう。
そして、俺はマスターオススメの串焼きのセットを頼み、ついでに印象付けのメニューも頼んだ。
「すいません。『レモネード』もお願いします」
「おう!『レモネード』ね。お兄さん、もしかして下戸かい?」
「いや、下戸じゃないんだけどイケる口でもないんでね。それに酒は食後って決めてるんだ」
これで印象付けもバッチリだろう。
それは良いんだが、普通この手の店の出会い系イベントって可愛い女の子の店員じゃね?ここでも、おっさんって…。
あ!可愛い女子店員いた!あぁ…向こうのイケメン客をお相手してんのねぇ…。
そうですかぁ…。
やっぱり俺はこの世界からイジメられてる…。
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